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前 気がつくと帰宅していた。 日はすでに落ちている。薄い闇が段々と濃くなっていた。日暮れ前には帰るつもりだったのにこんな時間になってしまったのは、今の私が手ぶらであることが理由になっている。 目当てのものが手に入らなかったため、知らぬ間に深追いしてしまったのだろう。こんな体たらくはほとんど経験したことがない。いつもは簡単に捕まえられるのに。 しかも、手ぶらということは、出かける前に持っていったものも無駄に使ってしまったことを示している。何て失態。また作らないといけない。その手間を考えると気が重い。 いや、それ以上に、積もり積もったものは何も変わらず、相も変わらず覆い被さっているのが、とにかく重い。……重い。 扉を開ける手に疲労感がまとわりついている。そして、まず鼻が身構えるのがわかる。じめじめとした天気が続くこの頃だ。中では生々しい臭いが息づいているだろう。一度外出してしまうと、「慣れ」はリセットされてしまうのだ。 滅入る気持ちを奮い起こして、中へ入る。 明日。とにかく明日だ。今日を耐えきってしまえば、また明日出かけることができる。今度こそ捕まえられる。 早くあの子に晩ご飯を作って、身体を洗って、寝かしつけてしまおう。汚れたところをふいて、散らかったところを片付けて、私も早く寝てしまおう。機械的な作業を機械的にやってしまばいいだけだ。それで…… …………? 何だろう。妙な違和感が玄関にまで流れてくる。 あの子が何かしたのだろうか。昼寝から覚めて、一人で遊んで、ということまでは予想できる。部屋の鍵も閉めてある。粗相などはその範囲で収まるはずだ。 そうじゃない。もっと違う何かが起こっている。 そう言えば、さっき私は玄関の鍵を開けただろうか。既に鍵は開いていなかっただろうか。外の地面はパラついた小雨で湿っていたが、玄関には私が入ってくる前に足跡がついいていなかっただろうか。 違和感の正体がわかった。気配がするのだ。まさか、泥棒か。 取られるようなものはないが、だから安心、というわけでもない。 恐る恐る靴を脱ぎ、慎重に気配の発生源を探ろうと、まずは居間をのぞいた。 「うーうー!」 いきなり発見してしまった。 膨れた顔に短い手足。頭の白いキャップ。同色の寝間着のような服。 「う~♪ うぅ♪ う~♪」 レミリア種のゆっくり。しかも胴体付きだ。 なんて珍しい。今まで多くのゆっくりを見てきたが、手足があるのは初めて見た。 近づいていくと、そのゆっくりはこちらを見上げてくる。 「どこから入ってきたの?」 「うー、ざくやー、ぷでぃんもっできでー、ぶでぃんー」 あらあら。会うなり人間違いをして、その上おやつを要求するなんて。 頭を撫でながら、尋ねる。 「あなた、どこの家の子? 森から来たの?」 「うー、れびりゃのおうぢはここだどー」 鼻にかかったようなダミ声で、人様の家を所有宣言。 ああ、何て、かわいいんだろう。 「ぞでよりぷでぃん、ぷでぃ~ん!」 「欲しいの? プリン」 興奮を内に秘めて、荒くなる呼吸を抑えて、にこやかに問いかける。 「はやぐー! もっでごないと、たべじゃうどー」 「じゃあ、たくさん食べてね」 私は少し身体を離すと、思いっきりゆっくりの腹を蹴りこんだ。 ぐごぎょ、と無様な音を喉から漏らして、饅頭は吹っ飛び、壁にしたたか身体を打ち付けた。 「…………! …………!」 痛みで呼吸もままならず、叫び声さえあげられないようだ。何が起こったか理解もできないだろう。 「ぐっ、ぼッ、……! ごぶぇ?!」 ようやくひり出すような息を吐く。私はにこやかに問いかける。「大丈夫?」 「なっ……なにずん……だどぉ」 見たところ腹に外傷はない。意外に丈夫なようだ。嬉しい。 「あら、食べたいんじゃなかったの?」 「ぢがっ、うどぉ……、れびりゃがほじいのは」 再び足を腹に叩き込む。口から出るはずだった言葉が、衝撃で肺に戻される。 何度も蹴りこむ。後ろは壁だ。暴力は逃げることなく全て身体に突き刺さる。 ゆっくりは小さな手足で必死に身を守ろうとしている。その手足さえ、蹴れば柔らかな感触を跳ね返してくる。それがとても心地よい。 たくさんの蹴りを食らって、ゆっくりは痛みか恐怖かその両方かで震えている。頬を引っ張り、何か言うまで待つ。 「んー、どうしたのかな?」 「ぎゅ、んぐっ」 まだ返事はできないようだ。頬をつまんだまま揺すり、引っ張り上げる。結構重い。普通のゆっくりなら頬がちぎれてもおかしくない重さが掛かっているのに、そんなことはなく痛がる様子を見せるだけだ。本当に嬉しくなる。 頬を手放すと、再び床に転がる。そして、ずりずりとはいずるように、逃げようとする。 私は左の二の腕を踏んで阻止する。それでもゆっくりはジタバタと動くが、完全に縫い止められてそれ以上どこにもいけなくなってしまう。ああ、何て弱く、馬鹿な生き物なんだろう。 体付きがどれだけの強度を持ってるのか興味が湧いてきた。踏んだ足に体重を掛けてゆく。伝わってくる響きは、腕のきしみか、それともゆっくりの叫ぶ声が振動となっているのだろうか。 「うふふふふ」 ついに全体重が乗ってしまった。それでもちぎれることはない。ある程度の反動をつけて踏み直してみても、激痛にほとばしる声が高くなるばかりで裂け目一つできない。 「そろそろあなたの中身が見たくなってきたわ。ね、見せて。ね? ね!」 今度は足を上げて、思いっきり勢いをつけて踏みつけてみる。何度も何度も踏みつけてみる。騒音としか聞こえない濁音混じりの絶叫が相変わらず耳に心地よかったが、腕の損傷につながらないのも相変わらずだった。 私は次第に自分の思い通りにならないことに腹が立ってきた。一方でそれがまた嬉しさをかき立てる。苛立ちは最高のスパイスだからだ。 もう一度腹に一撃を見舞った後、私は台所から目当ての物を持ち出してきた。これなら。 「じゃ、改めまして」 ゆっくりを仰向けにして、今度は右腕をつかむ。私が振り上げた包丁に目を丸くしてるけど、何を意味してるのかわかっているのかしら。 私は笑ったまま、思いっきり力を込めて一撃を振り下ろした。 「ぎひう゛ぉギょをぉおごぉおおぉおおぉおおおッ!!」 声帯を無視したような叫びと共に、赤い汁が散った。 中身が何か辛い物でできているゆっくりがいると聞いたことがあるけれど、これがそうなのだろうか。綺麗な色。興奮するわ。 「もっと、もっと見せてね。ふふ、うふふ、あははははっはははっ!」 楽しさを爆発させ、感情に行動を任せる。何度となく、包丁を叩きつけるように切り込んでいく。だが、切り傷が数を増やすのみでなかなか切断できない。切断したいのに。切断したいのに! 早く切断しなさい! 「これでどうっ? これでッ! ほらっ! ほらッ!!」 一番深いくぼみができたところに、逆手で持った包丁の先端を何度も打ち込む。狙い通り、裂け目が大きくなってきた。いいわね、いいわ! 「すごいわね、ほら、取れちゃうわよ、取れちゃうわ、ほら、ほらっ、ねッ!」 そして、ブツンという手応えと共に、ついに腕は根本から切断された。突き抜けるような快感が私の身体の中心を走る。 「ああ、取れちゃった! あははは! 中身は……ふふ、やっぱり肉まんかな? 辛そうだけどね、アハハ、アハハハハハハ!」 中身はかなり詰まっているようで、切断面からこぼれ落ちるのは肉汁ばかりだ。見ていると、柔らかで身の締まった肉汁たっぷりのステーキを連想させる。もしかするととても美味しいのかもしれない。他のゆっくり同様、食べるつもりは全くないから捨てるだけだが。 「……?」 ふと、私は気づいた。ゆっくりの反応がない。 「うそ!」 慌てて確認すると、良かった、死んだ訳じゃないようだ。痛みと恐怖で気絶しているだけらしい。白目をむいて泡を吐いているから驚いてしまった。安堵のため息をつく。水でも掛ければ意識を取り戻すだろう。殺すまでしてしまってはいけない。それはいけない。 まだまだ私に付き合ってもらわないといけないのだから。 私はこれからの楽しみを前にして、身体が喜びで震えるのを感じた。 …………やり尽くした後。 私は居間全体に飛び散った肉汁を前に、包丁をまだ一応の形を為す残骸に突き立てた。 四肢の欠如した胴体は、腹が割り開かれて中身を見せている。赤いソーセージのようなものが出てきたことから、形は違えどやはり肉まんの一種であるようだ。包丁はその中身に埋もれるように収められている。 頭部は両の目がえぐられ、鼻はそがれて豚のようになっている。口は両側が耳まで裂かれて、ピエロのようだ。そんな状態になっても、素手で中身をかき混ぜてやるまで、生きて叫んでいた。 あんなに生命力があって、あれほど長い間楽しませてくれるなんて嬉しい誤算だ。この近くに手足付きのゆっくりが住み着いたということなら、こんなに喜ばしいことはない。何かの神様に感謝した方が良いのかしら。 ただ、砂糖水を掛けても回復しなかったのは残念だった。肉まんだから塩水の方がいいかと思って、掛けてみたら酷く痛がった。だから、もっと掛けてやった。塩そのものもすり込んでみた。それはそれで楽しかったから良しとしよう。 片付けは大変だ。特に肉汁の量が半端ではない。けれど、この気持ちに浸りながらの掃除なら楽しくやれそうだ。 それにしても、この肉汁、辛子か何かで赤いのかと思ったが、そうではないかもしれない。特有の刺激臭がしてこない。食べるわけではないから味はどうでもいいのだが、何か気になる。今になって、どこでかいだ臭いであるように思えてきたのだ。馴染みのある臭い。でも、食べたことはないように思う。何だろう。 考えを巡らし頭をひねると、ふと、部屋の扉が開いているのが目に止まった。 ゆっくりの繁殖方法は、今のところ二通りのものが大勢を占めている。裸子植物タイプと胎生タイプだ。 ほとんど見かけないが、他に確認されているものとして、被子植物タイプ、両生類型卵生タイプ、分裂タイプなどがある。 自分の場合はどれでもなかった。気がつくと、岩穴の中にいて、傍には固い殻が散乱していた。 ということは、鳥類型の卵生タイプなんだろうか。しかし、親は近くにいなかった。爬虫類型の卵生タイプかもしれない。あるいは昆虫型か。 ともかく、最初に起こった欲求は「自分が何者なのか知りたい」ということだった。 何しろ生きる指針を与えるべき親も同族も見あたらないし、そもそも自分が何かがわからなければ種としての振る舞い方も想像できない。「吾輩は猫である」とか言えたらまだ良かったのだが。 かくして、『黒いゆっくりの自分探しの旅』という全くもってモラトリアムな劇が幕を開けるわけだ。そのうち盗んだバイクで走り出すかもしれないな。 いや、自分がゆっくりだと見当がつくのは、もう少し後だ。 とりあえずは魔法の森と呼ばれる場所を、草や木の実やら虫やらを口に含みつつさまよっていた。その中で、ゆっくりを含めた妖怪やら人間やらに出会ったりして。まあいろいろだ。 それでもまだ自分が何かわからなかったわけだ。まあ今になってもそうなんだが。ただ一応の手がかりがつかめたのが、大図書館に滞在したときだったな。 とあるツテでね、来客というか珍獣扱いで招かれたというか持ち込まれた。そこの主たちの好奇心を満たすことと引き替えに、しばらくお世話になったわけだ。 生まれたてで言葉を解していたように、文字も読むことができた。何故かは知らないが、とにかく読めた。それで色々調べることができた。さまざまな妖怪、動植物、外の世界のこと……。館長や司書との会話も有益だったな。 かなり充実した時だった。時間も忘れるとはあのことを言うのだろう。疑問符が好奇心呼び、興味が謎を喚起する。知識の岐路は際限なく奥地まで……ああ、いやいや確かに寄り道はたびたびしたが、第一義は忘れてない。自分のルーツだ。うん? その割には無駄知識が多い? そうかな? で、俺の出生について立てた仮説なんだが――ああ、まだ推測なんだ――どうもゆっくりと他の妖怪との合いの子らしい。 まず俺の身体だが、見事なまでの一頭身だ。顔だけオバケだな。 ゆっくり以外にも首だけの妖怪は多々いるが、大首にしてはお歯黒を付けてないし、チョンチョンにしては耳が大きくない。その他分析してみても、十中八九ゆっくりの血を引いているという結論に行き着く。どういう種のゆっくりかはわからないがな。 もう一方の親は、バック・ベアードである可能性が強い。聞いたことがない妖怪だって? 光化学スモッグの化性で、真っ黒な球体に一つ目がついたデザインなんだが。ああ、そもそもスモッグを知らないか。 ともかく、そういう妖怪だ。空中に巨大なそれが浮かんでいて、わはははと大きな笑い声を上げるのは、まったく恐怖だろう。 能力は主に目から発せられ、相手の精神に作用を及ぼすようだ。軽い幻覚から死に至るものまで、能力の幅はそれなりにある。 自分が羽も無しに宙を飛んだり、片目が不自由であったりした理由が、これで一応説明できるわけだ。体色や表皮などの特徴も含めてな。 まあ、親の能力に比べると泣けてくるほど初歩的な力しかないが、その辺りは少しずつ開発していこう。群れのゆっくりたちと共に。俺の第一義のために。 おおゆっくり、俺はどうして黒ゆっくりなの、なんて嘆き続けるだけでは芸がないしな。 さて、話を戻そうか。 ある母親がいた。特に何の変哲もない家庭を築いていたんだが、強いて言うと子供が生まれつき障害を持っていたのが特徴と言えば特徴かな。知的障害だ。 どれくらいの障害かと言っても、軽度なのか重度なのか基準がよくわからないな。具体的には、発する言葉が「あー」とか「うー」とか意味不明のものだったり、よくかんしゃくを起こして辺りの物をヒッチャカメッチャカにしたりとか。ああ、あと漏らしてしまった大便を団子にして投げて遊んでたってこともあったらしい。そんな程度だ。 母親と父親は人一倍、いや十倍はその子に手間を掛けた。手間を愛情と言い換えられるなら、それはそれは愛にあふれた家庭だったろうな。けれど、父親の方はある日家を出てしまった。 何でだろうね。愛を注ぎすぎて尽きてしまったのか、それとも始めから愛なんてなかったのか。母親がかんしゃくを起こして父親に当たるのが頻繁になった……これは原因に入るかな? 仕方ないことだと思うのだがね。子供にストレスをぶつけるわけにはいかないし、ましてやご近所の皆さんに怒りをまき散らすにもいかない。たまった鬱憤を受け止めてくれるのは愛する夫しかいないというわけだ。 けれど、その父親がいなくなってしまった。さて、彼女はどうなるだろう。自分の子供は常にストレスを渡し続けてくる。バケツリレーに自分の次がいない。どんどんバケツは増えてくる。どんどん、どんどん。積み上げられたバケツが瓦解して、圧死するのは時間の問題。と、その時だ。 家の中にゆっくりが迷い込んできたんだな。 小さなゆっくりだ。まだようやくあちこち歩き回れる程度の。身体無し、頭だけのオーソドックスなレイム種だ。他人の住居内でありながら、「ゆ~、おばさんゆっくりちていってね!」などと鳴いていて、そこにいた。 母親はそれを傷つけるつもりはなかったんだ。ましてや虐待なんて考えもしなかった。ただつまみ出そうとしただけだ。無言ではあったが、別に敵意があったわけじゃない。で、片手でその饅頭をつまんだ。 ところが……どうしたわけか……うん、それが事故だったのか、無自覚の故意だったのかはわからないんだが……力を入れすぎてしまったようだな。 子ゆっくりの叫び声に、ハッと手元をみると、まだ薄く柔い皮に指の先が食い込んでいた。中身がわずかにもれて小豆色に滲んでいる。 「いちゃぁあああい! いちゃいよぉおぉっ!!」という叫びに母親は慌てた。慌てて両手で支えて、 ぷちっ、と。 真ん中から割り潰してしまったんだ。 子ゆっくりも、当の母親でさえも、何が起こったかわからなかったに違いない。しかし、厳然とした事実はそこにあった。潰えた命という現実がね。 そのとき彼女が感じていた感情は何だったと思う? 絶望? 悲哀? まあ、混乱していたのは確かだったろう。一言で表すのは乱暴すぎるかな。ただ、その時、唇の端は上がっていたそうだよ。口だけは間違いなく笑みの形を取っていたんだ。 だから、迷子になった子ゆっくりを探しに来た親ゆっくりが、その母親に誘われるままに家の中に入っていき、さて、どういう末路をたどったか……なんて、説明するまでもないだろう。 玄関扉から上がりかまちにまで散らばった餡子。雑巾でぬぐいながら掃除する彼女の心の中は、もう喜悦の一色で染まっていた。虐待と虐殺による疲労と興奮が心臓をリズミカルに刻み、全身に快楽の血流を巡らす。長い間忘却の彼方に追いやられていた感情が、その時確かに蘇っていた。 ややあって熱が冷めてからは、自己嫌悪の情が海の波のように返ってはきた。彼女の心に染み入って痛みを与えはした。 けれど、自分の子供が、手づかみで食事をして、顔中を食べ物とヨダレと鼻汁まみれにして、そしてその場で大も小も漏らして、アバアバと口を開けてにやけて……みたいな毎日が続くと、母親の内側では、あの刹那の開放感に対する渇きがどうしようもなく襲ってくるんだ。 幸い彼女は村の端、森の近くに住んでいた。子ゆっくりが迷い込んできたのもそのせいであったわけだが、自分の方から捕まえにいくのにも良い条件になっている。 ゆっくりは人に近しい妖怪だからな。もちろんどこにでもいるわけではないが、その森はゆっくりには住みやすい環境だったので、森の周辺をうろついていれば自然遭遇できるほどには多くのゆっくりがいた。それについても母親には幸運だったわけだ。 菓子を使って、主に子ゆっくりを優しい言葉でおびき寄せるのが彼女の常套手段だった。甘味と甘言だな。こういうのに引っかかるのを甘ちゃんというんだ。うん、まあ、中身が甘味なんでずいぶんと捕まえられたわけだけども。げに悲しきは餡子脳。 数え切れないほどのゆっくり。無数の饅頭。それらを蹴り飛ばし、踏みにじり、えぐり込み、焼き焦がし、すり下ろし、握りつぶし、虐めぬき、殺し尽くして。そのつど彼女はたとえようもない高揚を感じ、その後に訪れる虚無の感情にさいなまされた。それは必然の虚しさだ。それでも止めることはなかった。 おや、不可解か? だが、自分を慰める行為というのは得てしてそういうものかも知らんね? で、その母親の住んでいる近くの森にだ、俺たちの群れが移移住してきたなら、当然群れの誰かが被害に遭うのは時間の問題になるよな。まさか、移動してきた翌日にやられるとは思いもしなかったが。そう、夜が一番短いあの日のことだ。 母親はこれまでしてきたように、森の周辺から子ゆっくりの姿を認めると、袋の菓子を出して呼びかけた。ねえ、甘いお菓子があるんだけど、もし良かったらあげるわよ、みたいなことをね。そこにいた三匹の子ゆっくりはすぐに興味を示した。ここまでは狙い通りだ。 しかし、いつもなら大抵簡単に引っかかるはずの子ゆっくりたちが、今回に限って警戒して近づいてこなかった。一定の距離を保って、誘いに乗ってこなかった。それもそのはずで、人間に対しては十分注意して相対するように、入念に教育されていたんだな。いやはや、群れの長の指導力がどれだけ高いかをうかがわせるね。 けれど、そこは母親も歴戦の将。慌てず、騒がず、次の手を打った。 「じゃあ、ここに置いておくから、欲しかったら持っていってね」 上手いね。菓子は小麦粉と砂糖を混ぜ、小さな粒にして揚げたものだ。揚げ玉状のドーナツだな。だから、地面に置くということは、ばらまくわけだ、袋いっぱいのそれらを。 母親は子ゆっくりたちの前から姿を消した。では、子ゆっくりたちはどう行動する? 警戒すべき人間はいない。お菓子には興味がある。お菓子は境界付近とはいえ、森の中にある。 だから、どちらからともなくお菓子に駆け寄る。それでも警戒心は切らしてないから、辺りをうかがいつつ口に含む。森では絶対に口にできないような味が口内に広がる。がっつきたい衝動を抑えて、より安全な森の奥で食べようという考えを誰かが述べる。しかし、できない。大きな塊ならまだしも、砂利のような粒がたくさんあるわけだからね。持ち運べるのはほんのわずかだ。これが母親の意図さ。 菓子を味わうために、子ゆっくりがその場に釘付けになることを想定して、製菓したわけだ。 子ゆっくりが大人のゆっくりに相談するということに考えが行き着けば、それが模範解答だったんだが、美味さの初体験にそこまで頭が回らなかったようだな。いやはや、教育不十分もいいとこだ。親の顔が見てみたいね。 子ゆっくりは徐々に菓子に没頭し始める。そこに母親が駆け寄って一網打尽? いや、真っ正面からいったら流石に気づかれる。音が届かないほどに遠回りして、後ろから失礼するのさ。昼間の森にも危険性はあるが、夜のそれと比べれば、格段に安全だからね。それに何度か使っていた手だ。森に立ち入ることに危機感は持ってなかった。そして、それは正しい認識だった。確かに、これまでは。 時間を掛けすぎてしまったのがまずかった。これまでの事例では問題のない時の間だけれど、この群れにおいては独自のシステムがある。十分な時間だった。母親と俺がご対面するには十分な、ね。 それで。 俺は彼女が一番望んでいることを叶えてやった。 本当に虐待したいものを虐待させてやった。本当に殺したいものを殺させてやった。 めでたしめでたし。 さて、お前さんも明日は早いんだろう。そろそろ寝床に戻ったほうがいい。また頑張ってもらわなくてはならないことが山ほどあるしな。 どうした? うん? その後の展開? おいおい、話はもう終わったんだぞ。 シンデレラや桃太郎のその後を問いかけるのは邪道だと思うがな。色々想像して楽しむのがいいんじゃないか。 おとぎ話とは違うって? ふむ。 そうだな。 『それから母親は苦しみから解放され、新しい人生を歩むことになりました。村人は母親の苦悩を知り、今後の彼女を支えていくことを約束します。確かにそれはイバラの道であり、進むには苦痛を伴うでしょうが、その遙かな先には光り輝く未来が…… いや、もちろん冗談だ。 追い詰められるままに誰にも相談できなかった母親。 何も気づくことなく放置し続けていた村人。 彼らがどんなエピローグを演じるのか。演じられるというのか。 言わぬが花というものだろう。語っても陳腐だ。 To be or not to be. このままで良いのか、いけないのか、彼女は悩み続けてきた。悩みながらも殺し続けてきた。殺しながらも渇き続けてきた。 それならば、この話はこの言葉で締めくくるのがふさわしいだろう。 「満足は死である」 黒ゆっくり2 続く 別の作者が書いたと思われる続き このSSに感想を付ける
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「厳しいゆっくり」 そのゆっくり一家の様子は、普通とは何かが違っていた。 一家を率いるのはバレーボールサイズのゆっくりまりさ。そこは何もおかしくない。 ついていくのはゆっくりまりさとゆっくりれいむ。数は大体半々ぐらい。そこもおかしくない。 普通とは何が違うのか…その違いは、話しかけてみて始めて分かった。 「ゆっくりしていってね!!」 ゆっくりの本能を深く揺さぶる、僕の一声。 普通なら、この言葉に反応しないわけがなかった。ところが… 「……ゆっ!」「…ゆ!」 子供たちは皆、少し声を漏らしただけ。 何か言いたげな顔はしているが、『ゆっくりしていってね!!』という元気な返事は返ってこなかった。 「おにーさん!!まりさたちはほかのばしょでゆっくりするからね!! なにもようがないなら、まりさたちはもうゆっくりいくよ!!」 先頭に立っている母まりさが、僕に向かって言ってくる。 こいつからも元気な返事はない。おかしいな…こいつら病気なのか? 試しに、もうちょっと揺さぶってみるか。 「まりさ、どこに行くのか知らないが、お兄さんはもっとゆっくり出来る場所を知ってるよ」 「ゆ!?そうなの!?ゆっくりちゅれていってね!!」「れいむもゆっくりしたいよ!!」 もう我慢できない、と言わんばかりに子ゆっくりたちが口を開いた。 そうそう、それが普通の反応である。だが、母まりさは普通ではなかった。 「ゆ!!そんなこというとゆっくりできないよ!!」 「ゆ゛!!」「びゃっ!!」 何も悪いことをしていないのに、母まりさに突き飛ばされた子ゆっくりたち。 転がるほどの勢いも、皮が破れるほどの破壊力もない、ただ痛いだけの攻撃だった。 子供たちは涙目で何かを無言で訴えてくるが、僕にも母まりさにも…何も伝わらない。 「おにーさん!!わるいけどまりさたちはゆっくりいそいでるからね!!じゃましないでね!!」 そう言い放つと、母まりさはとっとと先へ進んでいってしまった。 子供たちだけが、僕を名残惜しそうに見上げていたが… 「…ゆっくりしすぎだよ!!」 母の一言で、子供たちは飛び上がるようにして母の後を追いかけていった。 あの母まりさ、どう考えても普通じゃない。 『ゆっくりしていってね!!』『もっとゆっくり出来る場所がある』という二つの言葉。 ゆっくりの本能を最も刺激するはずの言葉に、母まりさは釣られなかった。 突然変異なのか、それとも病気なのか… 「こいつは面白そうだな…」 どちらにしても、この面白そうなネタを放っておくわけにはいかない。 僕は先ほどの一家をゆっくり追いかけることにした。 一家の巣はすぐに見つかった。木の根元に、精妙にカムフラージュされた大きな穴だ。 決して大きな穴ではないが、母まりさ+数匹の子ゆっくりなら十分な広さだろう。 僕は静かに巣穴に近づいて、隙間から中を覗いてみた。 「にんげんにはなしかけられても、しゃべっちゃだめっていったよね!!」 「ゆびゃああああぁぁl!!」 「みんな、おかーさんとのやくそくやぶってしゃべっちゃったよね!!」 「ぎゅべぇおおおおお!!」 「やくそくをやぶったわるいこはゆっくりできないよ!!おしおきだよ!!」 「あぎゅあああぁっぁ!!!」 合計5匹の子ゆっくりが一列に並んでいる。 よく見れば子ゆっくりというより、赤ちゃんゆっくりぐらいの大きさだ。 母まりさは、何か言葉を発するごとに子ゆっくりに一匹ずつ体当たりを食らわせる。 その勢いは母まりさの怒りに比例して強くなり…最後に体当たりされた子れいむは、壁にぶつかると口から 餡子を大量に吐き出してしまった。 ゆっくりにとって、命の源である餡子を吐き出すことは一大事だ。 処置を怠れば、死に至ることだってある。それは子ゆっくりもよく知っていた。 「うぶっ!!ゆべえええぇっぇぇえ゛え゛え゛ぇぇぇあ゛あ゛あ゛ぃ!!!!」 「ゆゆ!!おかーさん!!れいむが!!れいむがゆっきゅりできなくなっちゃうよ!!」 「ゆっくりたしゅけてあげてね!!ゆっくりなおしてあげてね!!」 周りの子ゆっくりたちが、必死に母親に助けを求める。 だが、母まりさは鼻で笑いつつこう言い返した。 「ふん!やくそくをまもれないバカなこは、ずっとそうしてゆっくりしてればいいよ!! みんなもやくそくやぶるとこうなっちゃうからね!!ゆっくりりかいしてね!!」 自分の仕事を成し遂げたと思っているのか、母まりさの顔は満足げだ。 それに対して、子ゆっくりたちの表情は完全に沈んでしまっている。 「子供を虐めるなんて…酷い母親だなぁ」 僕はくすくすと笑いながら、そのまま様子を観察し続けた。 母が食料を取りに出かけた後、しばらくして先ほど餡子を吐いた子れいむが目を覚ました。 「ゆ…ゆううぅぅ……!」 「ゆ!ゆっくりおきてね!!」「ゆっくりしていってね!!」 周りで見守っていた子ゆっくりたちが喜びの声を上げる。 気絶していた子れいむは特に外傷はないらしく、次第に元気を取り戻してゆっくりし始めた。 僕は母まりさがいなくなった今しかないと思い、巣穴に首を突っ込んだ。 「やあ!ゆっくりしていってね!!」 「ゆ?ゆっくりしていってね!!」 今度は5匹の子ゆっくり全員が応えてくれた。 やっぱり、普通じゃなかったのはあの母まりさに原因がありそうだ。 「さっきのおにーさん!!どうしたの!?」 「ここはれいむたちのおうちだよ!!ここでゆっくりすると、おかーしゃんにおこられちゃうよ!!」 怒られるというのは…たぶん“やくそく”のことだろう。 先ほどの様子からしてこの子ゆっくりたちは、母まりさと幾つか約束を交わしているらしい。 それらを破ると、先ほどのように罰を受ける…命に関わりかねない罰を。 つくづく理不尽な母親である。自分の都合を押し付けて、破ったら虐待だなんて。 「大丈夫だよ。すぐに出て行くからね。それより、皆に美味しい食べ物を持ってきたよ」 「ゆ!?たべもの!!ほちいよ!!ゆっくりちょうだい!!」「ちょうだいちょうだい!!」 クッキーを放り込んでやると、5匹の子ゆっくりは一斉に群がって貪り始めた。 母との約束という重圧を忘れた5匹は、本能に忠実な普通のゆっくりだった。 「ゆはっ!!うっめ!!めっちゃうっめ!!」「むーしゃむーしゃ!!しあわせー♪」 「じゃあお兄さんはもう行くからね。みんなはゆっくりしていってね!!」 って、食べ物に夢中だからたぶん聞こえてないな。 僕は食事を邪魔しないよう、追加のクッキーを数十枚放り込んで、静かにその場から立ち去った。 後ろからは、クッキーを貪り食う子ゆっくりの下品な声が聞こえてくる。 母まりさが帰ってくる頃に戻ってきて、“あれ”を実行することにしよう。 帰ってきた母まりさは、巣の中の様子に驚愕した。 一面を埋め尽くす見慣れぬ食べ物。それを美味しそうに食べている5匹の子供たち。 「ゆ!おかーしゃんおかえりなさい!!」「みんなでゆっくりしようね!!」 口の周りに食べかすをつけた子供たちが、出迎えの挨拶をする。 だが、母まりさはそれに応えない。 「これはだれからもらったの!?ゆっくりせつめいしてね!!」 母まりさの疑問は当然のものだった。子供たちが自力で食料を集められるわけがない。 しかも、5匹が食べきれないほどの量だ。母まりさだって、これだけの量を集めるのには2週間はかかる。 つまり当然の結論…『この食べ物は、誰かからもらった』 「ゆ……と、ともだちのまりさにもらったんだよ!!」「そ、そうだよ!!」 「うそをつかないでね!!にんげんからもらったにきまってるよ!!」 「ゆ゛!?」 母が真相を口にした瞬間、子供たちは固まってしまった。 “恐怖”…生まれたときから植えつけられてきた感情、たった一つに縛り付けられて。 約束を破ったことが母にバレた…その次に待っているのは、無慈悲な“罰”であることを知っているから。 横一列に、背を壁に向けて並べられた子供たち。 自分達のこれからを想像して、がたがたと震えている。 されることはいつもと同じ。だが、未だにその痛みに慣れることが出来ない。 「やくそくをやぶったらゆっくりできないよ!!」 「ゆぎゃああ゛あ゛ぁぁ!!」 「やくそくやぶるこは、おかーさんのこどもじゃないよ!!」 「ごみんあじゃあぁぁぁい゛い゛!!」 「にんげんとはゆっくりできないよ!!ゆっくりおぼえてね!!」 「もうゆるじでええぇぇぇぇえ゛!!」 「にんげんはわるいものだよ!!ぜったいゆっくりしちゃだめだよ!!」 「うがやおああおおおおぉおぉぉ!!」 壁と母まりさの身体で挟み撃ちにされる度に、悲痛な叫びを上げる子ゆっくりたち。 何度も何度も、何度も何度も、何度も何度も、何度も何度も。 繰り返し繰り返し、母まりさは5匹の子ゆっくりに順番に体当たりする。 『人間とはゆっくりできない』『人間と一緒にゆっくりしたら二度とゆっくりできなくなる』 全ては理解してもらうため。このことを理解して、覚えてもらうためだ。 自分は母に人間の危険性を教えてもらっても、すぐに忘れてしまった。 そして人間についていったばっかりに、友達を皆食べられてしまった…そんな自分の二の舞にならないように。 子供たちには忘れて欲しくない。ずっと覚えていて欲しい。だってそうしないとゆっくりできないのだから。 「がまんしてね!!がまんしてゆっくりできるこになってね!!」 「げりょうあおあおあおあおああああああ!!!」 母まりさは、何度も何度も、子ゆっくりたちに伝わることを願って…体当たりを続けた。 昼になって、例の巣に戻ってきて見ると…巣の中では再び虐待が行われていた。 母まりさが子ゆっくりに体当たりするたびに、張り裂けんばかりの悲鳴が僕の耳を突く。 「うぎゃあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁ!!!」 「ぎゅええええべべべべええ!!!」 「あばばばばあああああぁぁぁぁあ!!」 何故だか分からないが、母まりさは相当怒っているらしい。 母まりさの言葉は乱れすぎていて何と言っているか聞き取れないが…かなりノリノリである。 待てど暮らせど、虐待の嵐はなかなか止まない…痺れを切らした僕は、釣り針を握るとそっと巣の中に手を 突っ込んだ。 「……よし」 虐待に夢中になっている母まりさは、自分の帽子に釣り針が刺さったことに気づいていない。 子ゆっくりたちも、すっかり怯えきってしまって周りの様子など目に入っていなかった。 僕は、糸を思いっきり引っ張った。それに従って、母まりさの帽子が脱げて瞬く間に巣の外へ飛んでいく。 「ゆ!!まりさのぼうし!!ゆっくりまってね!!」 即座に異変に気づいた母まりさは、帽子を追って巣の外へ。 終わりなき虐待から開放された子ゆっくりたちも、安堵の表情を浮かべながら恐る恐るついてくる。 「おにーさん!!それはまりさのぼうしだよ!!ゆっくりかえしてね!!」 糸にぶら下がった帽子をぶらぶら振り回す僕。 まりさは必死にジャンプしてそれを口で咥え取ろうとするが、ぎりぎり届かない高さに調節しているので、 どんなに頑張っても…帽子まで後一歩、というところで勢いを失ってしまう。 「ゆぎゅうううぅぅぅ!!ゆっぐりがえじでね゛!!がえざないどゆっぐりざぜであげないよ゛!!」 「あっそう、じゃあ返してあげるよ、ほーれほーれ♪」 上から目線で物を言う母まりさを、僕は満面の笑みでおちょくる。 ぶんぶん振り回される帽子を目で追いながら、あんぐりと口を開けて狙いを済まして… 命と同じくらい大事な帽子を奪い返そうと、必死にピョンピョン跳ね続けている。 「うぎゅうううぅぅぅ!!!いじわるしないでね゛!!ゆっくりがえじでね!!」 ふと、巣の入り口近くにいる子ゆっくりたちに視線を移す。 さっきからじっとこっちを見ているが…母を応援する声は聞こえてこない。 普通の一家なら、『おかーさんがんばってねぇ!!』とか、『おにーさんとはゆっくりできないよ!』の 一言ぐらいあるものだが… つまり、そういうこと。子ゆっくりたちにとって、母まりさは“そういう”存在なのだ。 「お母さんまりさにひとつ提案だよ。子供の帽子かリボンを持ってきたら、この帽子と交換してあげる」 「ゆ!?」 果たして口車に乗って、子供の髪飾りの強奪に乗り出すかどうか… 僕にとっては一種の賭けだったのだが…どうやら僕の勝ちだったようだ。 母まりさは目の色を変えて、巣の入り口に集まっている子ゆっくりたちに襲い掛かった。 「ゆっくりにげないでね!!おかーさんにぼうしとりぼんをちょうだいね!!」 「おがーざんごっじごないでえ゛え゛ぇぇぇ!!!」 「ぞんなごどずるおがーじゃんどはゆっぐりでぎない゛い゛い゛い゛ぃぃぃ!!!」 子ゆっくりにとっても、帽子やリボンは大事なものだ。簡単に取られるわけがない。 母まりさに捕まらぬよう、子ゆっくりたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。 「ゆっくりつかまってね!!にげるこはゆっくりできなくなっちゃうよ!!」 「やだあああぁぁぁぁ!!!づがまるどゆっぐりでぎないよ゛!!」 「おがーざんやめでね゛!!ゆっぐりごっぢにごないでね゛!!」 母と子には体格差があると言っても、命と等価のモノがかかっているこの状況では、子供たちはなかな捕まらない。 実のところ、先ほどのクッキーにはゆっくりの運動能力をちょっとだけ強化する薬物が入っていたのだが… 母まりさも、当の子ゆっくりたちもそのことにはまったく気づいていない。 「おがーざんにぼうしどりぼんちょうだい!!そうすればみんなでゆっぐりでぎるよ゛!!」 なかなか追いつかないので、目に涙を浮かべながら子供を説得しようとする。 しかし、そんな言葉で釣られるほど子ゆっくりは愚かではなかった。 「おがーざんうそづいでるよ!!うそづくおがーじゃんどはゆっぐりでぎないよ゛!!」 「ゆっぐりついてこないでね゛!!ゆっくりどっかいってね゛!!」 「ゆぐぐぐぐぐ…どうじでぞんなごどいうの゛!!ゆっぐりでぎなぐなっでもしらないよ゛!!」 まだまだ子ゆっくりたちには追いつきそうにない母まりさ。 僕は母まりさにもっと必死になってもらうために、ライターで母まりさの帽子に火をつけた。 ボオォッ!! 何の素材で出来ているのかわからないが、本当によく燃える。 「ゆぎゃああああーーー!!!まりさのぼうしもやざないでえ゛え゛え゛ぇぇぇ!!!」 子ゆっくりを追いかけるのを止めて、燃え上がる自分の帽子目掛けて飛びついてくる母まりさ。 だが、僕がうまく糸を動かして帽子をひょいっと遠ざけたので、母まりさはそのまま地面に激突した。 「ゆぶっ!!やめでね゛!!まりざのぼうじもやざないで!!はやぐひをげしでよお゛お゛お゛ぉぉぉ!!!」 「まぁまぁ焦るなって。結構綺麗に燃えてるじゃないか」 地面に顔から落ちて身悶えている隙に、母まりさの髪を釘に結び付けて地面に打ちつけた。 これで母まりさは、ほとんど身動きが取れなくなった。 「ひをげしで!!うぶゅ!!いだい゛!!いだいよ゛!!がみがひっばられでるううぅぅぅぅ!!!」 帽子を燃やされている悔しさと、髪を引っ張られる痛みで…母まりさの顔は涙でボロボロになる。 痛みにのたうち回ろうとすればさらに痛みが襲うので、下手に動けない状況だ。 それでも母まりさは、何度も何度も助けを求める叫び声をあげた。 「まりさをだずげでぇ!!ごのままじゃゆっぐりでぎなぐなる゛!!」 「おねがいだがら!!ごっがらはなぢでえええぇぇえ!!!あだまがいだいいいいぃぃぃい!!!」 「ぼうじ!!まりざのぼうし!!もやざないでよ゛ぅ!!」 「……らんぼうするおかーしゃんは、ずっとそこでゆっくりしてればいいよ!!」 突然、一匹の子れいむが震えながら力いっぱい言い放った。 するとそれに続いて、次々と子ゆっくりたちが母まりさに罵詈雑言を浴びせる。 痛めつけられる母まりさの姿を見て、子ゆっくりたちの心境に変化が生じたのだろう。 母まりさが動けないことに気づいた、というのもあるだろうが。 「そうだそうだ!!おかーしゃんのぼうしなんか、ゆっくりもえちゃえばいいよ!!」 「おかーさんはずっとそこでゆっくりしててね!!こっちにこないでね!!」 「ばかなおかーさんはゆっくりしねばいいよ!!」 「いや゛ああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!ひどいごどいわないでえ゛え゛え゛ええぇぇぇぇえぇえぇ!!!!」 次々に打ち明けられる子ゆっくりたちの本音が、母まりさの心を深く抉る。 今まで母まりさに虐待され続けてきた子ゆっくりの鬱憤が……ここで爆発した。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 「らんぼうもののおかーさんはゆっくりしね!!」 「れいむたちにいたいことしたよね!!だからおかーさんにもいたいことしゅるよ!!」 身動きの取れない母まりさを取り囲んだ5匹は、怒りを爆発させながら集団リンチを始めた。 つい数分前まで母の虐待に怯えていた子ゆっくり…僕がちょっと手伝ってやっただけで、立場は逆転した。 「いだっ!!いだいよ゛!!ゆっぐりやめでね゛!!やめだらゆっぐりさせてあげるよ゛!!」 「うるさいよ゛!!おかーさんのいうごとなんか、もうきかないよ゛!!」 「おかーさんのせいでいままでゆっくりできなかったよ!!ゆっくりしんでいってね!!」 一体どれだけの間、母まりさに虐待されてきたのだろうか…その間に溜めてきたストレスは相当のものらしい。 容赦ない体当たりが、母まりさの身体を深く傷つけていく。 ところどころ餡子が漏れ出し、さらに傷は広がって痛みを誘発させる。 「あぎゃああああああっぁぁぁあぁ!!やめでやめでやめでやめでやめでやめでやめで!!!! じぬ゛ぅ!!じんじゃう゛!!ごのままじゃじんじゃう゛!!おねがいだがらやめでよおおおおぉぉぉ!!」 母まりさの悲鳴を完全に無視し、リンチを続ける子ゆっくりたち。 僕はそんな子ゆっくりたちに優しく話しかけた。 「そろそろ疲れてこない?お母さんの帽子が燃えてるのを見ながら、ゆっくり休憩しなよ」 「ゆ!そうだね!!ゆっくりつかれてきたよ!!」 「ゆっくりやすもうね!!みんなでゆっくりしようね!!」 「おにーさんあたまいいね!!おかーさんとはおおちがいだよ!!」 そんなことを言いながら、母まりさから離れていく。 取り残された母まりさの姿は…それはもう酷いものだった。 「ゆぶ……どぼぢで…?……まりざはっ…みんなのだめにっ…!!」 目玉は片方が抉られ、口は不細工に引き裂かれ、頬も深く噛み千切られている。 まだ生きているが…このまま餡子を漏らし続ければ、命が尽きるのは時間の問題だ。 「ゆー!きれいだね!!」「ほのおってきれい!!」「ゆっきゅりー!!」 「もえろもえろー♪」「ゆっくりもえろー♪」 炎をあげて燃える母まりさの帽子。それを見つめる子ゆっくりたちの目は輝いている。 やっと母まりさの圧制から解放される。明日からは自由にゆっくり出来る。 掴み取った明るい未来を見据えた…そんな目だ。 僕は糸を木の枝に固定して子ゆっくりたちから離れると、そっと母まりさに近づいた。 「やぁ、気分はどうだい」 「うぎゅ…だじゅげで……ゆっぐりでぎな…いよ…!!」 「でも、子供たちは今までゆっくり出来てなかったんだよ。お母さんである君が虐めていたせいでね」 「うぞだよ!……まりじゃは!…まりじゃは……みんな゛のっ…ために゛…!」 まだ悪あがきを続けている。うねうねと動く母まりさの頬の皮が気持ち悪い。 「みんなのために……ねぇ」 僕はため息をつきながら振り向いて、子ゆっくりたちに声をかけた。 子供たちは糸にぶら下がった帽子が燃えているのを、まだ楽しそうに見物している。 「なぁみんな!!このお母さんどうする?助けてあげる?」 「ゆ?そんなのほっといていいよ!!それよりおにーさんもこっちでゆっくりしようね!!」 「おかーしゃんなんかそのまましねばいいよ!!ゆっくりしんでね!!」 との返答を貰い、そのまま視線を母まりさに戻す。 「…だとさ」 僕は母まりさに向けてニコリと微笑んだ。 母まりさは、僕にとって最高の表情をしたまま…最期の叫び声をあげた。 「ゆ゛っ……ゆぎゃああああぁあぁぁぁぁぁぁぁあがえんrぎなえりおいりあがあrがにrg!!!!」 声にならない叫びをあげたが最後、母まりさは動かなくなった。 子供たちにはずっとゆっくりしてもらいたい。だからこそ、厳しく接してきた。 だが、子供たちには伝わっていなかった。それどころか家族を崩壊させる一因になってしまった。 どうしてこんなことになってしまったのか、自分は間違っていたのだろうか。 母まりさは考える。考える。考える。でもわからない。餡子が足りないからわからない。 子供たちに伝わらなかった想い。伝わらなかった願い。 一生懸命伝えたつもりだった。でも、伝わらなかった。伝えたかったのに、伝わらなかった。 そしてこれからも、その想いと願いは、伝えることはできない… 傍らで笑いあう子供たちの声が、遠くに聞こえる。 母まりさは、ゆっくりと後悔しながら…さいごのいのちを吐き出した。 あとがき この話、本当にかわいそうなのは誰だろう? 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
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―――2月14日。 恋心を抱く女の子が、意中の相手にチョコレートを送る日。 それが今日、聖・バレンタインデー。 ……自分で言うのも恥ずかしいけれど、私もその一人で……。 とある夜に、こなたが『俺の嫁』だからよ、と言った私だけど、女の子として付き合ってる相手に贈りたいのよ、やっぱり……。 それも……できれば、手作りチョコ。 工夫とか出来ないし、市販のより味は悪くなっちゃう……と思う。 でも、愛情をお金で賄うのは無理よ! ……きっと……。 私は、時計を見た。 短針は0と1の間、長針は3を指している。窓から見える外の風景は、黒一色。 つまり、AM0:15 学校の準備をしなきゃいけない時間まで、後約7時間足らず。 ……まだ、肝心のチョコは出来てない。 一週間前からつかさに協力してもらって、勉強の合間をぬって練習してきたけど、やっぱりなかなか上手くいかなかった。 頭ではわかっているけど、実践出来るだけの技術が私にはない。 何で私はこんな料理出来ないんだろ……。 思わずため息がこぼれる。 やっぱりつかさに手伝って………って、それはダメ……。 ―――数時間前。 「お姉ちゃん、本当に大丈夫?」 「自信はないわ……。けど、やらなくちゃ」 「でも、今まで一人でやったことないんだよ?」 「うん……。だけど、これは私自身の力で作らなきゃダメなのよ。完全に自己満足なんだけどね」 「お姉ちゃん……」 「こなたに思いを伝える物だから、私一人でやりたいの。わざわざ言ってくれたのにごめんね、つかさ」 「ううん、いいよ。私こそ、何にも考えないでごめんね」 「何言ってるのよ、つかさは私たちのこと、よく考えてくれてるわ。つかさとみゆきがいてくれなかったら、今私がこうしてチョコを作っていられることはなかったわよ」 「そ、そう言われると、照れるなぁ……」 「二人のためにも、こなたのためにも、そして私のためにも、頑張りたいの」 「えへへ、お姉ちゃんがお料理でこんな頑張ってるの初めてみたよ。こなちゃんも、きっと喜んでくれるよ」 「ば、バカ、からかってくる、の間違いでしょ!」 「あはは、お姉ちゃん最近可愛くなったよね」 「はぁッ!?突然何わけわかんないこと言ってるのよ!?」 「わけわかんなくないよ~。実際そうだしね~♪お姉ちゃん、頑張ってね!」 「ちょ、ちょっとつかさ、言いっぱなしのままいかないでよ……って、行っちゃったし。……時間もあんまりないし、作り始めなきゃ」 ―――そして今。 うう……静かに混ぜるってあれだけ言われてたのに、忘れるなんて……。 つかさといるときはできてたのに、私一人になったら何であんな慌てちゃったんだろ……。 ―――冷やす時間も考えたら、これが最後。 今度は、ミスしないように……。 「なんか凄いねぇ。受験真っ只中の人もいるのに、空気がいつもみたいに殺気じみてないよ」 こなたが、自分の教室に入る直前に言う。 「そうね。やっぱりみんな、多かれ少なかれ期待してるんじゃない?」 「かがみもその一人かな~?」 こなたが、ニヤニヤしながら私を見る。 「う、うるさい。そうゆうのは黙して語らないものよ」 「デレながらも否定しないかがみ萌え♪」 「へ、変なこと言うな」 相変わらずニヤニヤしながらこなたは私を見て言う。 「ね、かがみ」 「何?」 こなたが突然私に近づき、背伸びして耳元でそっと囁いた。 ――――――放課後、教室来てね。 「う、うん……」 私は顔が熱くなるのを感じながら、小さく頷いた。 満ちた月が空に浮かんでいた『あの』夜。 私とこなたの恋人としての関係がスタートした。 まだ私たちの関係を知る人は多くない。 つかさとみゆきとこなたのご両親とゆたかちゃん、そして私の家族。 私たちは、お父さん、お母さん、姉さんたちにちゃんと関係を伝えた。 最初はみんな驚いてたし、先のことを諭すようなことも言われた。 でも、私とこなたの意志の強さをだんだん理解してくれて、最後には私たち二人の関係を認めてくれるだけでなく、どんな状況でも私たちの味方になってくれるとまで言ってくれた。 あのときは嬉しくて、みんないるのに涙が止まらなかったっけ……。 こなたもこなたで、私をからかいながらも、目に涙を溜めてた。 やっぱり、一番身近な人が味方になってくれるのは、とっても心強い……。 ありがとう、お父さん、お母さん、姉さんたち―――。 日下部と峰岸にも伝えた。 「なんだよ、やっぱり柊はちびっこの妻だったのかよ」 と日下部言ってきたので、私はすかさず返す。 「こなたが私の嫁なのよ。勘違いしないでよね?」 「ひ、柊……」 私の言葉に、日下部は何故か呆然としている。 「ん~?どうかした?」 「ずいぶん惚気てるな……」 「それを言うなら、峰岸のほうがそうなんじゃない?」 彼氏いるし、ね。 「ひ、柊ちゃん……そんなことないよ」 「そのあやのとおんなじ顔してっぞ……」 「み、みさちゃんまで……」 「いや、それ以上かもしんねぇ……」 そうかしら……?そこまで言われるほどじゃないと思うんだけどね……。 私の感覚がおかしいだけ? 「でも柊ちゃん」 「何?」 峰岸は、私にむかってにっこり微笑みながら言った。 「今の柊ちゃん、とっても幸せそう。悩みなんて何にもないって顔してるよ」 「そうだな、いつかの時の暗い顔がウソみたいだぜ」 峰岸はあの頃から気づいていたみたいだからね……。 日下部も多分同じだったんだと思う……。 やっぱり、あの頃の私は他の人が見てもわかるくらい悩んでたんだ……。 ―――あの頃は、本当に辛かったわ……。 ―――でも今は、本当に幸せ……。 「よかったな、柊」 「おめでとう、柊ちゃん」 日下部は快活な、峰岸は柔らかな笑顔で私に言ってくれた。 「うん、ありがとう、二人とも」 私は自然と微笑みながら、その言葉を口にしていた。 キーンコーンカーンコーン――。 今日という日の出来事も、開幕はチャイムだった。 そのチャイムは、最後の授業の終了を告げるもの。 つまり―――――放課後になったことを知らせる音。 「こなた、お待たせ」 私はこなたに言われた通り、3年B組の教室にきていた。 3年のこの時期となると、みんなすぐ帰って家や予備校での勉強に勤しむため、 掃除当番に当たっていたとは言え、まだ放課後になって二十分も経ってない今でさえ、もう教室は静まりかえっていた。 「お、かがみん、待ってたよ~♪」 「ごめん、ちょっと掃除当番になってて……」 「いやいやぁ、ちょっとくらい遅いほうが周りに人もいないし、恥ずかしくなくっていいよ」 「ま、まぁそうね」 その言葉の後、少しの間静寂が流れる。 お互い、切り出すのに少しの勇気が必要……。 けど、必要な少しの勇気が、絞り出せなくて……。 先に口火をきったのはこなた。 「それでね、かがみ」 こなたは少し言いづらそうに、切り出した。 「う、うん……」 「実は、ね」 「うん……」 「つかさとみゆきさんにも、いてもらってるんだ」 「えええっ!?」 こなたの口から出た想定外の言葉に、教室を見渡すと私達の対角線につかさとみゆきがいた。 「あはは、お姉ちゃん、ごめんね……」 「そ、その、お邪魔でしたらすぐ私たちは出て行きますので……」 つかさとみゆきは、二人とも気まずそうな顔をしていた。 私には、こなたが何を考えて二人に残ってもらってるのかがわからなかった。 けれど、その問題の解はすぐにこなたに明かされた。 「今日は実はチョコを渡しあうだけの日にしたくないんだ」 「えっ……?」 こなたの顔は、いつになく真面目だった。 「私が前に言った、お互いの選んだ料理を交換するって話、覚えてる?」 漠然と記憶にある、単語の欠片。 それを1つずつ結び、少しずつ浮かび上がる、記憶の像。 導き出されたその内容。 「それって……」 「う、うん……」 顔が熱くなるのを感じる。こなたの顔もいつの間にか真っ赤になっていた。 「け、けけけっけっけ………」 恥ずかしさのあまり、思考回路はショート寸前な私は、舌が回らない。 「そう、結婚式……」 こなたは小さな声でそう言った。 「な、なななな、なななぁぁぁ!?」 ―――――ッ。 「で、でね、かがみ」 「ハウウゥ……しょーとシマシタデスゥ……」 「か、かがみ?大丈夫…・…?」 「はっ!?わ、私どうかしてた!?」 こなたが心配そうな顔で私の言葉に頷く。 「う、うん……」 「ごめん……。それで、なに?」 私の言葉に、こなたはその小さな口を開いた。 「今日、ここでやりたいんだ。想いが詰まった食べ物を交換して食べあって、そして誓いの言葉を言う。そんな簡単な、ネトゲの中でのと同じ結婚式だけど……私はそれがやりたいんだ。………もちろん、かがみがよければ、だけど……」 そっか……。 今まで私たち、付き合ってからこれといってお互いにその証となるようなこと、ほとんどしてなかったからね……。 やっぱり、少し不安なんだ……。 それにしても、お互いの選んだ食べ物を交換して食べる結婚式、か――――。 「ねぇ、こなた……」 「うん、分かってるよ……。ネトゲの中でのなんて、バカみたいかもしれないね。遠慮しなくていいよ、嫌だったらはっきり―――」 「そんな素敵な結婚式をあげるつもりだったなら、ちゃんと言っておいてよね!」 「えっ?」 こなたは、きょとんとしていた。 「い、良いの?ネトゲのやつのなんだよ?」 「当たり前じゃない。そんな素敵な式、私もやってみたいわ。たとえネトゲのでも、中身は人なんだから、現実のと変わらないわよ。それでたくさんの人が幸せになれるんだから、私たちも幸せになれるに決まってるじゃない」 「かがみ…………ありがと」 「お礼を言いたいのは私のほうよ。ありがとね、こなた」 私の言葉に照れたような顔を一瞬するこなた。でも、それを隠すようにいつもにすぐ戻った。 「ツンとデレを両方兼ね備えた言い方とは流石だね、かがみん♪」 「もう………茶化すな」 いい雰囲気なんだから、余計なこと言わなきゃいいのに、こいつはまったく……。 「それで、つかさとみゆきさんにも、私たちの結婚式を祝って欲しかったんだ」 「だから、二人に残ってもらったわけね」 「うん……」 ―――そっか、そうだよね……。 二人のおかげで私たちは今こうしていられる。 そんな二人には祝って欲しいよね……。 「つかさ、みゆき」 私は二人のほうを向く。 「私からも、お願いしてもらって良い?」 私の言葉に、つかさとみゆきは笑顔を咲かせた。 「うんっ!」 「はい、まかせてください!」 「二人とも、ありがとう」 私も笑顔で返した。 「それじゃ、みゆきさん、お願いしていいかな?」 「はい、任せてください」 こなたの言葉に、みゆきが笑顔のまま頷く。 「え、どうしたの?」 よくわからない中、みゆきはそそくさと本を用意し始めた。 「ふふ、かがみん、やるなら本格的に、がいいでしょ?」 「そ、そりゃそうだけど……」 「ってことで、みゆきさんに神父様役をお願いしたのだよ!」 「ええっ!?」 こなたの言葉に、本日何度目かの吃驚。 「調べてまとめた台本を用意して一昨日に聞いたんだけど、快く引き受けてくれて助かったよ~」 「本物の神父様とは程遠いものとは思いますが、全力を尽くしますね」 「ありがと、お願いね、みゆきさん」 私は二人のやり取りを見て、こっそりとこなたに聞く。 「こ、こんな大掛かりなお願いしちゃって、もし私が作ってなかったらどうするつもりだったのよ……」 受験も始まってるし、作ってない可能性も十分にありえたのに……。 「私にはかがみが作ってくれてるって、分かってたからね♪」 自信満々に言うこなた。 まったくどっからその自身が沸いてくるのやら、と思った矢先に浮かぶ、一人の顔。 「またつかさか………。まったくあの子は―――」 「いや、違うよ?」 「え?」 「かがみの手、丁度一週間前くらいから絆創膏がどんどん増えてるんだもん。練習してくれてるんだって、すぐわかったよ」 こなたが笑った。でも、それは表現するなら、ニヤリ。 「ありがとね、かがみん♪」 「ば、バカ……分かってたなら言いなさいよ……」 「え~?だって、ねぇ?」 うう……、ずっと隠れてやっていたのに筒抜けだったなんて……。すごい恥ずかしい……。 「ああ、もういいわよ!!早く始めるわよ!!」 「にひひ、照れ隠しするかがみは相変わらず可愛いねぇぇ~?」 「う、うるさい!みゆき、お願い!」 「はい、わかりました。では、お二人とも、こちらへ」 窓を背にしながら、優しく微笑んでいるみゆき。 ちょっと離れたところで、にっこりと見ているつかさ。 みゆきの方を向きながら、少し緊張しているこなた。 こなたの横に並んで、始まりの時を待ち続ける私。 「えー、コホン。それではここに、柊かがみと泉こなたの挙式を始めます」 ―――そして、式は開かれた。 窓には真っ青にもかかわらず、月が浮かんでいた。 「――――でも、消して忘れないでくたさい。夜空を見上げることを」 すらすらと止まることなく、みゆきの口から紡がれていく言葉。 「星々のひとつひとつが大いなる天空を形づくっているように、私たちひとりひとりにも必ず意味があることを。皆が出会いを大切に、互いを愛している限り、この地は祝福と加護を受けられるのです、と」 その言葉のひとつひとつが、とてもゲームの中でのものとは思えない程、素敵な表現ばかり。 「出会いは星の運命ですが、愛を成就させるためには試練が必要です。星の運命によって出会いし、この2人も、今宵その試練を受けます。ここに集った我らは、その証人となるのです」 今はその証人は、つかさとみゆきだけ。 でも、いつかきっと、もっとたくさんの人が私たちを祝福してくれる日が来てくれる。 「かがみ、こなた、向かい合ってください」 みゆきの言葉に、向かい合う私とこなた。 「こなた、今日はかがみの血肉となるものを持ってきましたか?」 「はい。ホワイトチョコを用意しました。私たちの関係が円満なように、鏡のように丸く、月のように真っ白なチョコです」 こなた……そこまで考えてくれて、作ってくれてたのね……。 って、エピソードまで言わなきゃいけないの!?聞いてないわよーーッ! 「よいでしょう」 みゆきはそう言って頷いた後、今度は私の方を向く。 「かがみ、今日はこなたの血肉となるものを持ってきましたか?」 ど、どうしよう……。何も思い浮かばないし……。 ああ、もういいわ!はっきりそのまま言ってやるわ!! 「はい。生チョコを作ってきました。一週間前からつかさと練習して、最後には私一人の力で作りました。ちょっと不恰好だけど、私の想いをこめました」 「よいでしょう」 さっきと同じように頷いてから、みゆきは再びこなたの方を見る。 「こなた、汝、この者を夫とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、かがみと共に」 「よいでしょう」 みゆきはこなた向かってうなずいた後に、また私のほうを見る 「かがみ、汝、この者を嫁とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、こなたと共に」 「よいでしょう」 みゆきは今度はまっすぐ私たち2人を見る。 「それでは、互いの願いを血肉とするため、交換した食物を口にしてください」 みゆきの言葉通り、私はこなたにチョコレートを差し出す。 こなたも、キレイに包装されてリボンまで可愛く結んであるチョコレートを私に差し出してくれた。 私はこなたに、こなたは私に。 それぞれの思いが、それぞれの手に。 こなたの渡してくれたチョコのリボンをとって包みを敗れないように剥がして中の箱を開けると、こなたの言葉通りの丸い大きなホワイトチョコが1つと小さめのが1つ、きれいに収まっていた。 さ、流石こなた、上手ね……。 こなたの方を見ると、こなたも私の作ったチョコを丁度見ているところだった。 ――早朝、今度はなんとか成功したけど、時間がなくて……ううん、言い訳しないわ。私が不器用で、セルクルから外した後のカットが上手くいかなく出来なくて……。 それに、専用の箱に入れて包むときも、少しきたなくなっちゃったし……。 あれじゃ、こなたに笑われるかも……。 そう思ったけど、こなたの私の作った不恰好なチョコを見る目は、嬉しそうだった。 「かがみ」 突然こなたが小声で話しかけてくる。 「何?」 私も小声で返す。 「今はそっちの小さいほうを食べてね。そうすれば、同じくらいの時間で食べ終われるから」 「わかったわ」 「それと……せーの、で食べよ?」 「ふふ、そうね、わかったわ」 私とこなた、2人で頷きあう。 「「せーの」」 私とこなたは同時に食べた。 口の中に、甘い味が広がる。 「美味しい……」 つい、そう言葉が漏れていた。 「かがみのも、美味しいよ」 「あ、ありがと……」 素直に美味しいっていわれると、結構恥ずかしいわね……。 そう思いながら、わたしもこなたもお互いのチョコを食べ終える。 それを確認してから、みゆきが再び口を開いた。 「こなたよ、我が後に続いて、誓いの言葉を述べなさい」 みゆきの言葉をこなたが、その後に私が繰り返して、神への宣誓をする。 ―――そして、いよいよ式はクライマックスへ。 「指輪交換、といきたいところですが、それは数年後の楽しみにしておきましょう」 流石に指輪交換までは出来ないわね……。 「月とうさぎのように、2人が末永く時を共にせんことを……」 みゆきがにっこりと微笑む。 「さあ、歩み始めるのです―――と言いたいところですが」 みゆきがそこでこほん、と式の幕開けのとき同様に演出で咳き込んだ。 「その前に、お互いに向き合い、心で誓約の言葉を交わして下さい」 「ちょ、ちょっとみゆきさん、それはカットって言ったじゃん!」 こなたが当然慌てたように言い出す。 「どうしたの?」 「カットするはずだった場所をみゆきさんが……」 「どうしましたか?式の最中ですよ。神父である、私の指示通りにしてください」 みゆきがいつも以上ににっこりと微笑む。 「えっと、何すればいいの?いまいちよくわからないんだけど……」 私はこなたに小声で聞く。 何故かこなたは顔を真っ赤にして俯いていた。 何気なくつかさのほうを見ると、つかさもさっき以上の笑みを浮かべている。 なんなの、いったい………? 私だけ理解できていないようだった。 「―――――」 「え?」 こなたが突然小さな声で何かを言った。けど、小さすぎて聞き取れなかった。 今度は聞き逃さないように、と注意深くこなたを見る。 そしてこなたの口から、本日何度目かわからない程の吃驚単語が飛び出た。 「キス……」 「き、きキきき、キきキ!?」 「お姉ちゃん、結婚式なんだから当たり前だよ~」 そ、そりゃ、結婚式っていったら確かにそうかもだけど、でも……!! …………まだ1回もしたことないし…………。 「か、かがみ……どうする……?」 「どうするもこうするもないわよ……」 小声で話す私とこなた。 「お姉ちゃん、こなちゃん、頑張って!」 応援してくるつかさ。 「ふふ」 にっこりと微笑むみゆき。 こなたとのキス。 言われてみれば、一回もしていなかった。 ――――――――。 「そうね、こなた、せっかくの結婚式なんだから……」 「かがみ……?」 「しよっか……?」 「それ、すっごくいやらしく聞こえるよ」 「ば、バカ、キスよ、キス」 「わ、わかってるよ」 「い、いい?」 「う、うん……」 ああ、自分で言い出したのに、やっぱり意識しちゃう……。 少しずつ近づく、私とこなた。 その距離に比例して鼓動が、いつもよりもさらに速く鳴る。 こなたの顔が、もうほとんど目の前。 曖昧だけど、3センチくらい……。 こなたが瞳を閉じる。 私も、同じように瞳を閉じた。 そして、距離が―――――――――0になった。 お互いから感じられる、お互いの想いが詰まった味。 ファーストキスはレモンの味って聞くけど、私たちのそれは、とっても甘いチョコの味だった。 少しして、名残惜しい気持ちがありながらも、私とこなたの間に再び距離が出来た。 こなたの顔を見ると、真っ赤な顔で照れながら私を見つめていた。 多分、私もおんなじような顔、してるんだろうな……。 「おめでとうございます、泉さん、かがみさん」 「お姉ちゃん、こなちゃん、おめでと~~!」 つかさとみゆきが、拍手をして祝ってくれる。 「あ、ありがとう、二人とも……」 私は、恥ずかしい気持ちをなんとかこらえながら、2人にお礼をする。 「ありがと……」 こなたも聞こえないくらいの小声でそう言った。 「さあ、歩み始めるのです」 私とこなたは、自然とお互いの手を繋ぐ。 「祝福に満ちた、第一歩を………」 私たちは何も言わず、けれど同時に歩き出した。 「おめでとう~~、二人とも!」 つかさはまた私たちに祝いの言葉をくれる。 「お二人とも、本当におめでとうございます」 みゆきもいつもの口調に戻って、私たちを祝福してくれた。 「かがみん」 「どうしたの?」 「いつか本当の結婚式があげられる時はさ、私、純白のウェディングドレスが着たいな。かがみは白のタキシードを着てね」 「ふふ、いいわね。そうしよっか。そのときはちゃんと、指輪の交換もね」 「うん。つかさとみゆきさんにも、また祝ってもらわなきゃね」 「そうね。きっとつかさはラッパみたいのを吹いて、みゆきは紙ふぶきを撒いて祝福してくれるわよ。天使みたいにね」 「あはは、かがみの言ってる通りになる気がするよ」 私たちはゆっくりと並んで歩きつづける。 「ねぇ、かがみ、それとさ」 「ん、こなた?」 こなたは私のほうを向いて、顔を赤くしたまま笑顔を向ける。 「これからもよろしくね、ステキな旦那さま」 私もこなたに笑顔で返す。 「うん、この先もずっと一緒よ、カワイイお嫁さん」 ――時はうつるもの。 ――その先にある私たちの未来にうつるもの。 それは―――――『11』。 私とこなたが一緒に並んでお互いを助け合って生きていける、そんな『11』の世界。 Fin... コメントフォーム 名前 コメント 2023年になった今でも素敵な作品出会えて良かったです。 GJ!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-02 21 47 17) これ見たっけぇぇぇぇぇっ!? -- 猫好きカービィ (2021-01-24 18 36 07) いやいや、俺はなあ、2020年じゃあああ!!! -- 猫好きカービィ (2020-02-16 11 47 12) こなかがに幸あれ -- 名無しさん (2017-07-09 18 22 24) 2017…だと… みwikiさんすげぇ -- 名無しさん (2017-03-27 09 35 49) いや....俺は2014年だ!! 感動した!! -- こなみん (2014-08-17 02 15 41) とっても感動する話でした! これからも、こういう作品を作り続けてください 応援しています! まぁ・・・2013年じゃ遅い気もするけど(-。-; -- チョココロネ (2013-11-16 22 38 53) 毎度おもうが、みwikiさん結構主要キャラになってないッスか? -- 名無しさん (2010-08-14 01 30 28) 最高です…!! 本当にこうなれればいいね -- 名無し (2010-06-10 01 56 27) なんという素晴らしいハッピーエンド…感動しました -- 名無し (2010-06-02 00 11 15) 成る程これがあのメガミのピンナップのイラストに繋がって行くと -- 名無し (2010-05-18 17 48 20) あれ、なぜだか目から汗がダラダラ出てくるぞ…。 -- 名無し (2010-05-05 19 57 55) 同じく全俺が泣いた -- 白夜 (2009-12-16 23 55 45) なんだろう…さっきから頬が湿っぽい…PCの画面も妙にぼやけてるぞ? -- こなかがは正義ッ (2009-11-13 01 02 19) 全俺と表情筋ですら泣いた -- 名無しさん (2009-11-11 23 00 48) 全俺が泣いた -- 名無しさん (2009-03-11 18 22 50) 素敵なSSでした GJ☆ -- ポーター (2008-10-05 22 56 45) 感動しました -- 名無しさん (2008-10-03 21 37 01) 泣いた -- 名無しさん (2008-09-01 00 11 38) GJ 本当に将来こうなるといいね -- 名無しさん (2008-03-17 16 47 12)
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夏休みのある日のこと。 「あっぢぃ~……」 朝はそうでもなかったが、昼近くになって急激に気温が上昇してきた。日射しが強く、湿気は高く、風は無い。柊家に遊びに来ていたこなたは、かがみの部屋でたちまちノックダウンしていた。 「オタク殺すに刃物はいらぬ。日照り三日も続きゃいい、ってか……」 「暑さに弱いのはオタクじゃなくてあんたの性質だろ」 パタパタと団扇を仰ぎながら(時々こなたの方も仰ぎながら)、かがみも全身にじわじわと汗を掻いていた。本当に暑い。 「あれだねやっぱり。CO2とかエルニーニョとか温暖化現象とか京都議定書とか色々あって、こんな暑くなってるんだろうね」 「京都議定書はちょっと違うだろ……」 「あ゛ー……あぢぃ……」 ぐでーんと床に寝そべったこなたは、そのまま俯せに動かなくなってしまった。本気で辛そうだ。 「ちょっとこなた。大丈夫?」 「うーん……大丈夫じゃないかも。最近ネトゲやら色々忙しくて寝不足だったし、体力落ちてるっていうか」 「自業自得だろそれ」 結局そういうことかと呆れ、かがみはため息をつく。しかしこなたが辛そうなのは事実なわけで。 「……居間に行こうか? エアコン付けて」 「……いく」 居間でエアコンを付け、冷風が少しずつ部屋を満たすにつれ、こなたも人心地ついた様子だった。 「あー、生き返る……かがみん、かたじけない」 「どういたしまして。何か冷たい物でも飲む?」 「うん。ありがとう」 かがみは台所に行って冷蔵庫を開く。麦茶、ミネラルウォーター、牛乳、オレンジジュース……どれにするかと考えていた時、ふと隅っこの方に目が付いた。 「そういえばこれ忘れてた……」 少し考えた末、グラスを二つとストロー二本、氷を幾つか鉢に入れ、ミネラルウォーターとその口の広い瓶をお盆に乗せて居間に持っていく。 「ねえこなた。良かったらこれ、ちょっと飲んでみない?」 「ん? 何それ?」 瓶入りの黄色い液体。よく見ると輪切りにしたレモンが沢山詰まっている。 「自家製のはちみつレモン。つかさが前に作ってたのを、私も作ってみたのよ。作るっていっても、レモンを輪切りにして蜂蜜に漬けるだけだけどね」 「へー」 かがみは瓶からはちみつレモンを少量グラスに垂らし、ミネラルウォーターで適度に薄める。 「カルピスみたいな感じだね」 「そうね。そのまんまじゃさすがに濃くて飲めないわよ」 氷を入れて、ストローでグラスをかき混ぜる。一丁上がりだ。 「それじゃ、いただきます」 こなたがストローに口を付け、一口飲んでみる。 「どう?」 「んー……」 しばらく唸っていたこなたは、一言。 「酸っぱい」 「え? そう?」 そう言われて、かがみも慌てて一口飲んでみる。 「ホントだ……前につかさが作った時は、もっと甘くて美味しかったのに……」 「レモンの入れすぎか、蜂蜜が少なかったんじゃないの?」 「あ、そうかも……何で私はこんな簡単な物を失敗するかな……あはは」 苦笑いするが、実際は少し凹んでいるかがみだった。 「ごめんね、こなた。口直しに、オレンジジュースか何か持ってくるから――」 「何で? これでいいじゃん」 「だってこれ、酸っぱいって……」 「けど美味しいよ? 一口目は酸っぱいけど、飲んでると丁度良い感じに甘さが分かってくるね」 そう言いながらこなたは、グラスに残っていたはちみつレモンを飲み干した。 「ぷは……何かこう、かがみみたいな味だね」 「なっ……何わけわかんないこと言ってんのよ!?」 「酸っぱさをツン、甘さをデレに喩えているわけで――」 「真面目に説明すんな!」 「まあそんなわけで、おかわりプリーズ」 満面の笑みで、こなたは空のグラスを差し出す。 「~っ……まったくもう……」 怒ったように顔を赤くしながら、かがみはこなたのグラスにはちみつレモンを注ぐ。 今度作る時は、もっと甘くしようと考えながら。 おわり コメントフォーム 名前 コメント ハwチwミwツwンwデwレwモwンwwwww -- 名無しさん (2023-02-16 02 53 06) 出ましたよ こなたの無自覚な口説き文句☆ 俺もハチミツンデレモン作りたくなった -- 名無しさん (2011-04-13 18 16 42) ナイスツンデレモン -- 名無しさん (2009-11-29 23 48 27) 名無しさん (2009-06-18 13 13 50)に向けて、「ハチミツンデレモン」発言について。 ………誰が超上手いこと言えと。 -- 病院坂黒猫 (2009-07-22 23 52 12) 上手いなぁ・・・キャラそれぞれの空気感がびしびし伝わって きます こんなSSを書けるくらいらき☆すた通になりたい もんです・・・ 現状はWEBでアニメを2回通しで見たのと、 原作4巻途中まで読んでストップしてるとこなんで・・・ -- 名無しさん (2009-06-22 23 19 04) がっつり特盛的な「こな×かが」も良いけど、この作品みたいな喉ごしスッキリ的なのも好きだー!GJ -- kk (2009-06-18 23 43 08) 何げに俺、この作品好きなんだよね。 あまりベタベタしない、ちょうどいい感じのこなかがといい、 かがみの人格を表したような素敵な飲み物といい…。 よし!この飲み物を「ハチミツンデレモン」と名付けようwww -- 名無しさん (2009-06-18 13 13 50) いいね~。 飲んでみたいよ、甘酸っぱいはちみつレモン・・・ -- 名有り (2009-02-02 23 24 30) 甘酸っぱい☆ -- 名無しさん (2008-07-02 13 41 04) 甘酸っぱくていいね。 -- 名無しさん (2008-04-04 23 11 43) ほのかに甘い☆GJ! -- ゆん (2008-04-04 22 46 21) いい。 -- 名無しさん (2008-04-04 14 05 12)
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※前半部分でゆっくりがかなり傷つきます。ご了承ください。 ※考えようによっては全編通してゆっくりしていません。ゆっくりできなかったらごめんなさい 『あめのなか』 その日は、まさに叩きつける大雨だった。 「……ぅ…………………ぃ………ぅ………………」 ぬかるんだ地面、倒れた木々があちこちに散乱する中にまりさはいた。 「…れ……………ぅ……………………れい………………むぅ……………………………」 その体はひどく傷つき、その口は力なくれいむの名を呼び続ける。 運が無かったのだ。 たまたま崖の上にある木の洞を住処にしていたところに、 たまたま10年に1度といったレベルの大雨が降り、 たまたま土砂崩れが起き、 それに、巻き込まれた。 そして…ゆっくりというものとは程遠い、傷だらけの、泥だらけの姿になって無残にも打ち捨てられている。 「…………ぁ……………まり………………さぁ…………………………」 それはほんの幽かな呼び声。 雨粒ひとつが地面に叩きつけられるよりもずっとか細い声。 しかし 「………む……………れいむ………………れいむぅ……………………………」 まりさには聞こえていた。 自分を呼ぶその声が。 「まりさ……まりさぁ………」 「れいむ…………」 土中に埋もれなかったのは不幸中の幸いだった。 2匹は泥の中を進み、互いに近づいていく。 お互いの距離は五尺も離れていなかったが、2匹には二百由旬よりも遠く感じた。 やがて、2匹はその距離を零にする。 泥にまみれ、幾多の傷をその身に刻み、頬を力なく擦り合わせる。 「れいむ…」 「まりさ…」 2匹は再びゆっくりし始めた。土砂崩れが起こる前のように。 なおもその身を打ち続ける雨の中、2匹はゆっくりと目を閉じた。 そして…2匹の全身に無数のヒビが走った。 すると突然、まばゆいばかりのスポットライトがれいむとまりさを映し出す。 同時に2匹の傷ついた表皮が弾け飛び、中から新品のゆっくりれいむ・ゆっくりまりさが現れた。 ザ・ニューゆっくり! 「ゆっくりして」「ITTENE-!」ステージにれいむの声が響く 。 詰め掛けたオーディエンスはれいむの久々のステージに期待で爆発しそうだ。 今晩も伝説のリリックが聴ける。幻想郷生まれゆっくり育ち。ゆっくりしたラップが聴けるのだ。 ZUN帽を斜めに被りサングラスをかけたまりさが ターンテーブルをいじりながら目でれいむに合図する。 重たいサウンドがスピーカーから響く。ショウの始まりだ 「おうちCRASH! カミナリFLASH! ゆっくりプレイスあっという間にVANISH! 雨粒COLDISH! 泥んこをWASH! 新たなる気分で So FRESH! (ドゥ~ン ドゥンドゥンドゥ~ン ゆゆゆっゆっゆっゆゆゆゆゆっゆっ!) 激しい雨! 降り止まぬため! ゆっくりできないここ数日! いっちょこ・こ・らで! みんなハッ・スル・して! 明日のお日さまを祈ろう YUKKURI! SAY HO!(HO!) SAY HO HO HO HO!」 まりさのプレイも好調。オーディエンスの熱狂はこわいくらいだ。 まだゆっくりの時代は始まったばかり、そんなメッセージを乗せた リリックがマシンガンのようにれいむの口から飛び出していく。 本物のゆっくりしていってね、それがここにあるのだ。 -End- 元ネタ:コピペ 長年連れ添った仲の良い老夫婦(これでググればたぶん出ます) 以前上げられていた「ロジャー・ゆっくり」というタイトルのゆっくり漫画(byお医者さんの人)でまりさが言っていた 「あめのなか、かさもささずにあまおとをたのしむゆっくりがいてもいい 『ゆっくり』とはそういうことだ」 というセリフ(これもパロだけど)にいたく感銘を受け、自分なりのゆっくりを考えてみたところこういう結論に至りました。 ,. -‐-、 ,.- 、 / i /, ヽ. / ハ├──-//i i ,' / ソ ヽ、! | i / ; ; ゝ、____ノ 〉--' / /、__; ィ ハ 、_; ! i ハ 〈 i / ハ_ニ;、,レ レ、_;、ゝ | Y ハ レヘ i' rr=-,´ r=;ァハソ ハ …え?前半部分で鬱展開だと思った?ばかなの? | ノ l |〃 ̄  ̄ l | ノ ノ ハヽ、 'ー=-' ノ i ( イ / / イヽ>, -r=i' ´イ ハノ 〈rヘ ! レ´ `y二」ヽレ' 〈 ばかですみませんーw だまされたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!でもよかったぁぁぁ!!! ゆっくりできなくなっちゃうかとおもいましたよ(汗 くーるでいいとおもいます。また書いてください。 -- ゆっけの人 (2009-01-02 18 43 51) このコピペに気付いた瞬間、私の腹筋は消えて無くなりました -- 名無しさん (2009-01-03 07 57 07) やられた・・・ -- 名無しさん (2010-11-28 21 54 54) 名前 コメント
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作品リストへ 前へ 次へ B-02:06-00735-01:むつき・萩野・ドラケン:レンジャー連邦 さん 「名前の無い海の物語」 「遠い未来にまたお前と会えるのなら、幸せな事だろうなあ。」 年老いた一人の男が腰まで海水に漬かり、水面から頭を出したこれまた年老いた一頭のイルカの頭を優しくなでる。 「俺はもう長く無い、こうやっているのも体に堪える様になってしまったよ。」 深い皺が刻まれた顔をくしゃりと笑みの形にし、顔を上げるといつもと変わらぬ太陽と、照りつける光を反射し輝く海を忘れじと目に焼きつけた。 「…イルカよ、お前に貰ったものだが、これを預ってもらえないか?」 男は海を見据えたまま懐に大事にしまっていた小袋を取り出すと、その中味をイルカにくわえさせる。 「我が子には預けられぬ…悲しい事だが欲にとり憑かれてしまってな…、残るものなどさほど無いというのに」 日々争う声、荒む空気、大切なものを無くしてしまった子供達の醜い姿に彼はため息をつく。 「これはお前の子供達が受け継ぐのがいい…いつか大切な友が出来た時に渡す事ができればそれは幸いだ。」 イルカは寄り添う様に体を彼に預けていたが、その言葉に 「ピイ」 と一つ鳴くとゆっくりと周囲を回ってから沖へと泳ぎ出す。 男は笑むとその姿をいつまでも見送り、生涯最後となる涙を皺深い頬から海へと落としたのだった。 …彼が亡くなったのはそれからすぐの事、子供達は必死に彼の持っていた大粒の真珠を探したが、とうとう見つかる事が無かったという。 主人のいなくなった家の外、彼の孫達が庭先の砂で遊びながら無邪気に話していた事を大人達は気付かない。 「おじいちゃんは、うみにかえすんだっていってたの」 「しってる、おじいちゃんのいるかさんにでしょ」 二つの可愛い声の主は、男から不思議なイルカとの友情の物語を一緒に口ずさむ。何度もねだって聞いたのですっかり憶えていた。 『むかしむかし、ひとりの若い漁師がいました…』 漁師はある日、晴れた海へと小舟を出していた。しかしその日は天気が良いにも関わらず魚がちっとも捕れず、不思議に思っていると小舟の側に一頭のイルカが泳いでいるのに気付いた。 漁師は退屈紛れにイルカに話す。 「イルカよ、今日の海はどうしたというのだ、こんなにも晴れているのに魚がいない、いったいどういう事なのか?」 エサに使う小魚をその口先へと持って行けば、イルカは口をあけ魚をぱくり。それから水面から顔を出すと紛れも無く人の声で漁師に話し始めたのだ。 「二本足の者よ、これより海は大きく揺さぶられる、我の仲間はこれより沖に皆移動した、そなたもここから離れることだ」 イルカはそれだけ言うと驚く漁師を置いて沖へと泳いでいってしまった。 我に返った漁師は、ありったけの力を振り絞り舟を漕ぎ陸へと向かう。途中仲間に声をかけ陸に戻る事を話したが、信じる者は少なく戻ったのはほんの何艘かだけだった。 半信半疑の皆と共に舟を陸に上げ、疲れた体を休めようとした時、にわかに激しい突風が吹き、浜辺の砂を巻き上げそれがその身を叩きだした。 「何事だ!」 仲間達も驚き沖の方を見やれば、今までに無いほどの巨大な黒い雲がみるみる内に空一面に広がり、先ほどの穏やかさが嘘の様な強風と豪雨、そして高波が彼らを襲ったのだ。 それは3日3晩続き、そして漁師の言う事を信じず海に残った仲間は誰一人戻る事は無かったという。 漁師は嵐の去った後、イルカと出会った場所へと向かう。波間を覗き込めば魚の姿、あの時はそれも無かったのだと思い出す。 「イルカよ、いるだろうか?この間の漁師だ!そなたに感謝を、お陰で俺は礼を言う事ができる!」 いるだろうか、いないかもしれない、それでも漁師は声を大にして感謝の心をイルカへ海へと伝えた。 穏やかに戻った海を見つめ、漁師は余りにも近くに有り過ぎて見えなかった海の恵み、太陽の恵みに思いを馳せる。あの嵐が終り日の光を見た時、どれだけ感謝しただろうか、海に繰り出し釣り上げた魚を手にした時の喜びを噛み締める。 「二本足の者よ、生きたか」 ふと声をかけられ驚きそちらを向けば、波間につるりとした丸い頭黒い瞳。 「…イルカよ」 漁師は日に焼けた顔を破顔させると、恩人の元へと舟をよせたのだった。 「…それから漁師は何度もイルカの元へ、そうして二人は仲の良い友人になったそうだ。で、漁師はイルカに大きな真珠を友情の証に貰うんだけど、それはその人が亡くなったとたん消えてしまったって不思議な話」 一人の青年が最後におしまい、と言葉を切ると、隣に座る自分の友人に向かい笑顔を向けた。 「これ、俺の家に代々伝わる話な、あんまり信じてる奴いないんだけど、アリなんじゃないかなと思うよ、お前さんと出会えたし」 青年は腕を組むと視線を隣に向けた。そこには人の言葉を話すイルカ知類の姿。 「奇遇だな二本足の友よ、その話なら我らも良く知っている」 イルカは懐かしそうに目を細めると、大切にしまっていた宝物を長い時を超えて返えせるという喜びを、口を開く事で表わしたのだった。 作品への投票・ひと言コメント 【テンプレート】 ○国民番号:名前:藩国 ○支払い口座:投票マイル数 ○作品へのコメントをひとこと ○020003201:忌闇装介:akiharu国 ○個人口座:1 ○作品へのコメントをひとこと オチが素敵ですw -- (忌闇装介@akiharu国) 2008-06-17 18 20 33 ○42-00236-01:黒霧:星鋼京 ○個人口座:1 ○作品へのコメントをひとこと なるほどー、素敵なお話だと思いました。 -- (黒霧@星鋼京) 2008-06-18 23 33 08 ○26-00499-01:ひわみ:たけきの藩国 ○個人口座:1 ○作品へのコメントをひとこと こういう話好きですー。 あと、イルカ良いよねw -- (ひわみ@たけきの藩国) 2008-06-30 22 25 21 ○17-00339-01:きみこ:FVB ○個人口座:1 ○ステキですねえ。人と人でないものが、こんなふうに友達になれるような日が来て欲しいと思いました。 -- (きみこ@FVB) 2008-07-03 23 53 29 名前 コメント すべてのコメントを見る 上へ 作品リストへ 前へ 次へ -
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「いよぉ、チビッ子、最近ちょっと胸でかくなったんじゃねぇか!ほらっ(パシッ)」 「む、むぅうううううっ!(バタッ)」 「こなちゃん!」 「こなた!」 「あ?おい、どうしたんだよ!チビッ子ぉ!ちょっと胸触っただけだってヴぁ!」 「こなちゃん、しっかり!(抱き上げ)すぐ保健室へ連れてってあげるから!」 「つかさ、私も行くわ、さ、つかさ早く!」 「日下部さん、こなちゃんに何かあったら…(ゴゴゴゴ)」 タタタタタタ… 「凄い勢いで行っちゃったわ」 「おいあやのォ…柊妹って…」 「みさちゃん、可愛そうだけれど…」 「な、何だよォ」 「今日がみさちゃんの命日かもね」 「あやの、冗談になってないってヴぁ!」 「みさちゃん、私冗談なんか言ってないわよ」 …… 「(保健室前)あやのぉ、怖くって入れないってヴぁ!」 「何言ってるの、自分から出向いたら、妹ちゃんも命だけは助けてくれるかもよ」 「あやのォ、冷たいなァ」 ガラッ! 「わ、柊っ、あ、あ、チビッ子は?」 「あ、ああ、こなたは落ち着いて寝てるし、日下部には何の責任もないわ、私も教室へ戻るところ」 「でも、チビッコの様子も見たいし、柊の妹が…」 「そう?じゃあ…ねえつかさ、日下部が見舞いたいって、え、そう?じゃあ日下部入ってやってよ、私は、あ、峰岸も教室へもどろ」 …… 「チビッ子ォ、ごめんよゥ、大丈夫か」 「すーすー」 「妹ォ、悪気はなかったんだってヴぁ」 「あ、あはは、こなちゃんも無事だったんだし、日下部さんも教室へ戻ってね」 「そうかァ?いいのか、妹」 「そうね柊さんが付き添ってるし、日下部さんはそんなに心配することはないわよ」 「じゃあ、先生失礼します、柊妹も、チビッ子も(ガラガラ、ピシャン)」 …… 「柊さん、日下部さんの手前ああ言いましたけれど…このままじゃあ、泉さんは大変なことになりますよ、わかりますか…」 「はい、先生」 「本当なら泉さんの保護者の方にも相談しなけりゃならないことなの、わかる?」 「先生、それは」 「まあ、あなたのお姉さんも注意してきちんと見守るからってあなたをかばって…いいお姉さんね、だから暫く様子を見ます。 でもあなたも泉さんの身体を見たでしょ、泉さんはずいぶん我慢していたと思うわ」 「こなちゃん、ごめんね、私馬鹿だから、気付かなくて…」 「泉さんはまだ、あなたみたいに身体が出来上がっていないの、だから今回みたいなことにならない様に注意して気配りしてあげてね。 じゃあ泉さんが目覚めたら送っていってあげてね」 「はい」 …… 「こなちゃん、くすん、ごめんね、ごめんね」 「…つかさ、もういいから、泣かなくていいから…」 「こなちゃん…よかった、気が付いたの、先生が送って行く様にって」 「うんつかさ、帰ろう、でもさつかさ…」 「大丈夫だよこなちゃん、今日はもちろん安静に…それにもう大事なこなちゃんに………痛みで気を失うくらい胸が腫れるようなコトしないから…」 「うん、もう少しやさしくしてほしいカナ、私はつかさと肌が触れ合ってるだけでもつかさの愛情は伝わってくるから」 ■作者別保管庫(4スレ目)に戻る コメントフォーム 名前 コメント
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「ふたば系ゆっくりいじめ 873 ゆっくり向けの節分/コメントログ」 ゆうぎ・すいか愛でを期待していたのに…裏切られた。 節分ネタにれいむしか出さないとか、ばかなの?しぬの? -- 2010-07-09 03 37 56 そう思ったらじぶんでかけばいいでしょう?ばかなの?しぬの? -- 2010-07-15 01 59 39 イラストを見る限りでは最後の最後まで苦しんだみたいだな。いいオチだ。 -- 2010-08-02 12 35 11 わけもわからず死にやがれ糞れいむ! -- 2010-09-05 14 39 39 ↓↓↓↓ゆっくりなんて愛でてるやつは死ね!!!あっごめーん!ついうっかりゆっくりできない発言をしちゃったよ!! -- 2010-09-25 00 57 22 食べ物を粗末にするれいむが死んでよかった -- 2010-11-18 08 11 30 ↓↓↓↓↓↓勝手に自分の中で決め付けてそれが出てこなかったら文句とか、ゲスれいむやまりさと一緒の餡子脳だなwバカなの?しぬの?(笑) -- 2010-11-28 06 40 23 ↓↓↓↓↓↓↓しぬのはお前の方だろ。糞愛で野郎が・・・ -- 2010-11-28 12 39 13 ↓落ち着け!愛でというスタンス自体を否定してしまえばお前もトップ注意書きの読めない餡子脳に認定されるぞ! 俺たちはあくまで↓×8の自分中心餡子脳発言だけを責めるべきだ。 希少種のタグも愛でのタグもついてないのに注意書き無視して勝手に期待して勝手に裏切られたとか言って批判コメ書いてくなんてばかなの?しぬの? -- 2011-02-12 23 49 29 ヒャッハー!!糞袋は虐待だーーー!!! -- 2011-10-15 22 40 49 wwwきめぇwwww -- 2011-10-17 00 40 02 おお、きもいきもい。 -- 2011-10-17 20 08 12 めっちゃおもろかったwwやっぱり理不尽虐待は最高だZE! ただほんのちょっとだけ気になったのはお兄さんは生粋の鬼威山で この日の為に一ヶ月間は虐待もせずに育てたのかな? まあれいみゅさえ苦しんで死んでくれたのならどうでもいい些細な事だけどね -- 2012-01-22 15 25 23 ゆんやーーーーーこの挿し絵さん きょわいぃいぃぃぃ!! -- 2014-03-09 02 47 42 お前黙れ -- 2014-06-04 22 35 56 弱ってる赤ゆで自分しか頼れる(ゆっくりさせてくれる)者がいなければなつくから可愛い。けどしばらくすると自ゆんで色々やりたくなって生意気になってくる。それをされる前に潰す。飼いゆなんてシステムを楽しむ愛で派らしいお兄さんじゃないか -- 2017-05-28 18 47 03 きったねぇな -- 2018-08-26 21 05 22 グロっ -- 2019-03-31 01 50 08
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池田理代子の聖徳太子コラム 2004年11月15日に読売新聞社主催の世界文化遺産登録10周年記念シンポジウム 「法隆寺の歴史と聖徳太子の周辺」が開催され、池田理代子はパネリストとして出席。 この時のパンフレットを見つけた方の報告(516、535~536)。 (536のヘッダは省略して引用部分を連結した) 516 名前:マロン名無しさん[] 投稿日:2008/05/10(土) 10 55 01 ID 4fSTdISo リヨタンH15.11/15に行われた 「法隆寺まのると聖徳太子の周辺」ていうシンポで パネリストとして出てる。 (ちなみに梅原猛さんが基調講演してる。) 法隆寺近辺のサ店に パンフが置いてあった! 535 名前:516 1/2[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22 26 21 ID ??? 平成15年11月15日 「法隆寺世界文化遺産登録10周年記念シンポジウム 法隆寺の歴史と聖徳太子の周辺」プログラムより 「聖徳太子に心をはせて」:劇作家 池田理代子氏 大阪・四天王寺の依頼で、同寺創建1400年を迎えた1993年に 劇画『聖徳太子』を出版しました。 四天王寺も法隆寺と並んで太子ゆかりの寺。「子どもたちにきち んとした太子伝を」と言われ、ずいぶん資料を調べて書きました。 それまで太子に対する日本人のイメージは一万円札での姿で 見るように、厳格な聖人でした。 でも大変悩みの多い人だとわかりました。1400年も前に新しいこと を数々成し遂げました。仏教を取り入れ、遣隋使を送り、憲法を作 りました。日本という国にとって初めてのことをやり遂げるという、 ある意味、大変な跳ねっ返りで新しいもの好きのコスモポリタンでし た。これまでの太子像と違うものが浮かび上がりました。 とんでもない目新しいことを言う。反発や驚きは大きかったでしょう。 でも立派に実行しました。 蘇我馬子や推古天皇が大きな力になって、三本立て路線で、斬新な 改革が出来たと思います。 三人の重要な役割を私なりに理解して漫画に描きました。 太子の血統は絶えました。でも太子の精神は受け継がれています。 生前も慕われましたが、残したものは大変多く、とくに日本人にとっての 道徳的な基盤を築いた功績は計りしれません。 一万円札から聖徳太子の姿が消えて凶悪犯罪が増えた、と言う人さえ いるほどです。 法隆寺は、世界最古の木造建築が今も残っていることに文句なく感動 します。建築や美術の面での意義は計り知れません。世界文化遺産に 登録されて、まだ、たったの十年だったかという感じ。これからもしっかり と伝えていってほしいですね。 父の故郷が奈良県高取町で、実はそこに私のお墓もすでに用意していま す。ですから奈良や、近くの飛鳥には特別の思いがあります。魂が帰って いく場所のような気がします。何かに包まれているような気がします。 「気」が違います。花や木が力強く生え、大地の持つ力が強い。バイタリ ティを感じます。 飛鳥は韓国語の安住の地「安宿」が語源との説があります。古代に渡来 人がたくさん住みました。慶州の景色に似ていますね。 これだけ技術が発達し、科学が進歩した今の時代、宗教はますます人間 にとってなくてはならないものになるでしょう。しかし、それを正しく子 どもたちに教えていない。生活に根ざしていない。宗教の持ち方、進行の 持ち方をきちんと教えることが大切です。そういう意味で、仏教を中心に 据えて活躍した太子に目を向け、学ぶことは大変意義深いことですね。 tp //ccfa.info/cgi-bin/up/src/up18841.jpg 539 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 23 37 08 ID ??? 「子どもたちにきちんとした太子伝を」と、ずいぶん資料の処天を調べてぱくりました。 540 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 23 46 21 ID ??? きちんとした太子伝→「元号は推古」ですか。。。 544 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/12(月) 03 09 36 ID ??? 535 536 なんか言ってることが山岸凉子のインタビューと似てる。 池田理代子の方が全然エラそうだけど。 545 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/12(月) 03 14 33 ID ??? 特に「太子と言えばそれまでは一万円扎のイメージだった」、 「私はこれまでとは違った太子のイメージが浮かんだ」 という意味の内容は、山岸凉子が既に発言してるんだけど…。 他の人が「一万円扎の太子のイメージを山岸凉子が変えた」と 評価した記事よく見たし… 551 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/12(月) 19 59 29 ID ??? 535 「子どもたちにきちんとした太子伝を」 と言われて描いたのが女顔で長髪に生花付けた超能力者の太子なのかw 一万円札から聖徳太子の姿が消えて凶悪犯罪が増えた、と言う人さえいるほどです。 この根拠の無い例えは何w 一万円札から太子が消えた1984年以降の凶悪犯罪は増えてるどころか減ってるよ。 殺人認知件数なんか戦後最低記録を更新中だ。 ttp //pandaman.iza.ne.jp/blog/entry/515564/ シンポジウムの聴衆を馬鹿にしてるのか? いや、それとも話してる方が(ry シンポジウムで司会をしたアナウンサーが所属する会社のサイトに 紹介記事があります(PDF)。 ttp //www.ac-gr.co.jp/kiraboshi/0403sp/0403sp02.pdf
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その3より こんな感じで、れいむの虐待は毎日のように行われていった。 過ぎてしまえば、長いようで短かった一か月。 れいむは何度心が折れてしまいそうになったか分からない。実際、折れた方がどれだけ楽だっただろうか。 しかし、その度にれいむの心を救ってくれたのは、同じく男に虐待を受けるまりさとありすの存在であった。 男は初日の説明通り、一日一時間の虐待を済ませると、きっちりと虐待を止めて、れいむを元の部屋に帰してくれた。 本当に虐待以外に興味がないのか、虐待時間以外は決してれいむたちに干渉してこなかった。 そのため、残りの23時間は、部屋から出れないことを除けば、自由に過ごすことが出来た。 れいむは一日の大半を、寝て過ごす。 虐待時間は一時間とは言え、あまりに過密な内容に、十分な休息を取らなければ、それこそいつ死んでもおかしくないからだ。 まりさやありすも同様に、大半を休息で過ごしているそうだ。 その後、起きたら食事の時間である。 部屋にはドッグフードと水が毎日欠かさず用意されており、その点に関してだけ言えば、森での生活より遥かにゴージャスであった。 とは言え、初日のように体が受け付けないことも多く、楽しい食事とはそうそういかない。 それでも、体力回復には食事を取らなければならないこともあり、れいむはどんなに苦しくても、毎日食事を取り続けた。 その後はまりさ・ありすを交えての意見交換会。 三匹で集まれる時間はあまり長いものではないが、これがれいむの一日の中で最大の楽しみであった。 内容は、今日はどんな虐待をされたのかとか、これこれこうすればあんまり痛くないだとか、明日はきっとこんなことをされるに違いないといった虐待に関することが半分。 そしてもう半分は、ただただ無駄話の駄弁りである。 大抵は男の悪口であったり、自分はどこどこの森で暮らしていただとか、昔こんなことをしたことがあるとかいった世間話だ。 もしこの時間がなくなれば、それこそれいむの心は早々に折れていたことだろう。 まりさとありすが居るからこそ、れいむは心を保ち続けることが出来、未だ信じるに足らないが、「飽きたら森に帰す」という男の言葉を微かな希望として生き続けている。 どれか一つ欠けても、先はないのだ。 まりさとありすと言えば、この一か月の間に二匹に対する感情も変化していった。 まずはまりさ。 出会ったときから美ゆっくりであったまりさへの親愛度は高かったが、今では以前に輪をかけて大きなものになっている。 最初は単なる一目惚れであったが、今では間違いなく、れいむはまりさに惚れ込んでいた。 会話を交わしていて分かったのだが、まずまりさは頭がいいのだ。 無論、所詮はゆっくりの中でのことであり、人間や妖怪とは比べられないが、それでも母ぱちゅりーに匹敵するのではというほどの知識を溜めこんでいる。 聞けば、まりさの片親もぱちゅりーであり、幼い頃から様々なことを教え込まれてきたらしい。 今後使う機会があればよいが、丈夫な家の作り方や安全なキノコの見分け方など生活の知恵からちょっとした雑学まで、れいむとありすに懇切丁寧に教えてくれる。 また、リーダーシップにも長けていた。 まりさは三匹の中で一番年長であり、自然とまとめ役をこなすことが多い。まりさ種特有の気質も無関係ではないだろう。 れいむとありすが喧嘩した時もうまく収めてくれたし、三匹の意見が食い違うことがあっても、常に一歩引いて二匹を立ててくれる。 こういうさり気なさがまりさの魅力を引き出しており、結果、れいむのまりさへの好意は急上昇していったのである。 続いてありすであるが、最初はれいむにとって、あまりいい印象を持つゆっくりではなかった。 しかし、今ではれいむの親友であると、はっきりと断言できる存在となっていた。 ありすについて真っ先にいうなら、とても優しいゆっくりだということである。 自身も辛い目に遭わされているにも関わらず、常にれいむとまりさの心配を優先し、自分は二の次に置いていた。 以前、れいむが寝れなかった時など、ありす自身も辛いはずなのに、一晩中、れいむの話し相手をしてくれたことがあった。 都会派を気取るところは最初から変わりないが、それはありす特有の照れ隠しの場合が多く、付き合いが続けば自然とそれが理解出来るようになっていた。 そんなありすであるが、小さい頃から親まりさ一匹に育てられたらしい。 れいむがうっかりと「おとうさんはどうしたの?」と聞いてしまったことがあって、すぐに失敗したと思った。 こういう場合、大抵れみりゃや野生動物に食べられたか、人間に捕まったかのどちらかであるからだ。 しかし、ありすから返ってきたのはそのどちらでもなかった。 ありすの親ありすは、なんとレイパーだというのだ!! これには、れいむばかりかまりさも驚愕した。 レイパーありすは、無理やり親まりさをすっきりさせると、親まりさを置いてどこかに行ってしまったらしい。 その後、ありすは親まりさ一匹で育てられたそうだ。 レイパーから生まれたありすは、高確率でレイパーになることが多い。 先天的にレイパーの因子を持つことと、望まれないで生まれてきたことによる親からの愛情不足、生活環境の乱れが、レイパーへと成長させる主な原因である。 しかし、このありすはレイパーの子供でありながら、とてもレイパーを憎んでいた。 望まれて生まれて来たわけではなく、周りのゆっくりたちはそんなありすをレイパーの子と蔑んだが、親まりさはありすを憎むどころか、自分の子供としてしっかりと育ててくれた。 その過程を見て育ったありすは、親まりさを心の底から尊敬し、愛し、レイパーを憎んだ。 自分は決してレイパーなどという下品で下等なゆっくりにはならないと心に誓い、常に他者を思いやる心を持ち続けようと、今日まで頑張ってきたのだという。 それが、この慈愛に満ちたありすなのだろう。 れいむは、見もせず伝聞だけでありす種すべてを嫌っていたことを恥じ、ありすに謝罪した。 ありすは、そんなれいむに怒ることはなく、「仕方がないわ」と笑って許してくれた。 それ以来、二匹は親友と呼べるようになった。 二匹の年齢がほぼ同じくらいなのも、それに輪をかける結果となったのだろう。 これが現在のれいむの二匹に対する感情である。 男の虐待がなければ、三匹仲良くいつまでもゆっくり出来たことだろう。 男に連れてこられなければ出会うこともなかったのだが、例えそうだとしてもれいむはそれが悔しくて仕方がなかった。 しかし、男の虐待は、ここにきてようやくターニングポイントを通過したことを、この時のれいむは知る由もなかったのである。 翌日、今日も一日が始まる。 男が三匹に虐待する時間はほぼ決まっており、今日もその時間がやってきた。 虐待の順番は、まりさ→ありす→れいむ→まりさ→ありす→れいむ→まりさ→……とサイクルが決められており、昨日はありすが一番だったので、今日はれいむが最初である。 ところが、男はれいむの部屋になかなか入って来ることはなかった。 いつもなら入ってくるや、れいむを木箱に詰めて虐待部屋に連れていくのだが、いったいどうしたのだろう。 男が居ないわけではない。 現にここまでの足音はしっかりと聞こえているので、扉のすぐ前に男は居るはずなのだ。 順番を忘れたのだろうか? もしかしたら今日は虐待されないんじゃ…… れいむがそんなあり得ないことを考えていると、男がようやくリアクションを見せた。 れいむの部屋を開けることなく、壁越しに大きな声で言葉をかけてくる。 れいむだけでなく、まりさとありすにも聞こえるように、そこから話しているのだろう。 「お前たち、よく聞け。今日から虐待の一部を変更する」 「ゆっ!?」 虐待の一部変更? 一体今さら何を変更するというのだ? まさか時間を延ばすのだろうか? それとも更なる痛みに耐えなければならないとか? まさか、虐待に飽きたから殺されるんじゃ!! れいむは焦った。 何しろ今日の虐待はれいむが最初なのだ。 全く心構えが出来ていない。 しかし、男はそんなれいむの心情を知ってか、「怯えているようだな」と前置きをして、説明を続けた。 「心配することはない。虐待方法は、前と変わりはない。時間はきっちり一時間だし、決して殺すまで傷めつけたりはしない。 他の時間は何をしても構わない。寝るのも食べるのも三匹で語り合うのも、お前たちの自由だ」 「ゆっ……それじゃあ……」 「変えることはただ一つ。今日から、お前たちの中の一匹だけを虐待することにする」 「ゆゆっ!!」 一匹だけ? ってことは、残された二匹は虐待されずに済むってこと? でもそんな都合のいい話があるだろうか? かつては疑うことを知らなかったれいむも、今ではすっかり俗世の垢にまみれ、あらゆることに考えを向けるようになっていた。 あれだけ虐待の好きな男が、一匹だけを虐待し、他の二匹を虐待しないなんてそんな甘いことをするだろうか? れいむがその旨を男にそれを問いただす。 男も予め予想が付いていたのだろう。れいむの質問に、淀みなく返事を返してくれた。 「その通り。今日からは一匹だけを虐待し、他の二匹は虐待しない」 「ゆゆっ!!」 れいむはその言葉に、あんぐりと口を開けた。 あり得ない。あり得るわけがなかった。 余りにも自分達に都合がよすぎる。なぜ今頃になって、男がそんなことを言ってくるのか、全く理解が出来なかった。 何か裏があることは間違いないだろう。 男はまたしてもれいむの心を悟ったように、続けてくる。 「どうやら、何か裏があるんじゃないかって疑っているようだな? まあ、今までの経緯を見れば、お前らが俺を疑うのは当たり前だな。 だが、この話に裏はない。一日の虐待は一匹のみ、他の二匹は今日から虐待をされなくなる。この話は真実だ。ただし、裏ではないが一つだけ条件がある」 れいむはほら来たと思いつつも、言葉に出さずに男のいう条件に耳を傾けた。 「虐待されるゆっくりは、俺が決めるのではなく、お前らが選出する。これが条件だ」 「ゆっ!! れいむたちがえらぶの?」 「その通り。相談して誰が虐待されるかを選び、選ばれたゆっくりだけが虐待され、他の二匹はその日は解放される。次の日は誰、次の日は誰と、毎日決めるんだ。 自分で立候補してもいいし、多数決で決めても構わない。毎日、同じ奴が虐待されても構わないし、三匹仲良く順番に虐待されてもいい。決めるのはお前らだ。 ただ、お前らが虐待される一匹を選出できなかった場合、その日は今まで通り三匹全員を虐待する。無論、それでも俺は構わないが」 「ゆぅぅぅ……」 男の言葉に、れいむは悩んだ。 未だ完全に男の話を鵜呑みには出来ないものの、もし話が本当だとするなら、自分たちにとってこれほど都合のいいことはない。 しかし、自分たちが選ばなくてはならないというのが一番の問題だ。 誰か一匹を選ぶということは、その日の生贄を選ぶということである。 れいむは二匹を親友だと思っている。 向こうもれいむを親友であると思ってくれているという自負がある。 たかが一か月の付き合いだが、今や二匹は自身の一生をかけても惜しくない存在になっている。 本心である。 嘘ではない、嘘ではない、が…… あの虐待と友情を天秤にかけると、それが揺らいでしまう自分がいることに、れいむは気付き愕然とした。 それだけ男の提案は魅力的なのだ。 もし生贄に選ばれさえしなければ、森に解放されるその日まで、ずっと虐待されなくなる可能性があるのだ。 あの地獄の苦しみにも匹敵するほどの暴力を、その身に受ける必要がなくなるかもしれないのだ。 忘れかけていたゆっくりした日々を、再びおくることが出来るかもしれないのだ。 どうして簡単に結論を出せるだろう。 虐待される者を選ばないという選択肢は、初めから却下だ。 せっかくのチャンスを不意にするような馬鹿者はここにはいない。 これをするくらいなら、三匹でサイクルで回すほうが効率的だ、というかサイクル回しこそが、この場合最もベストな案であろう。 これなら全員等しく虐待されるので、友情面は何ら変わらない。 しかし、虐待時間は三日に一度、今までの1/3で済むことになるのだ。 もし、今日虐待されるのが誰かで揉めるようなことがあれば、そこはれいむが立候補すればいい。 元々今日最初に虐待されるはずだったのはれいむなのだ。 それに今日虐待されてしまえば、明日明後日は平穏に過ごすことが出来る。 早いか遅いかの違いである。 と、ここまで考えたが、れいむはそれをまりさとありすに言い出しきれなかった。 確かに三匹を平等に考えれば、これがベストな案なのは間違いない。 しかしながら、自身だけに重きを置けば、永遠にゆっくりすることすら可能な選択がある。 二匹との友情は壊したくない。 けれども、相談次第では虐待されないかもしれないチャンスがあるのを、みすみす逃したくはない。 虐待は怖い、痛い、辛い。二度と受けたくはない。 でもまりさとありすに、れいむの代わりに虐待されろとは言えるはずがない。 このジレンマが、れいむの心に重くのしかかる。 そんなれいむの葛藤を余所に、男は言葉をドア越しに言葉をかけてくる。 「まあ、いきなり決めろって言ったって、すぐには思いつかんだろう。一時間後また来る。その時まで、今日誰が虐待されるか考えておけ。決まらなかったら、全員を虐待するからな」 そう言って、男の足音は遠ざかっていく。 が、次の瞬間、沈黙を続けていたまりさが、いきなり声を上げた。 「おにいさん、ちょっとまってね!!」 「ん? なんだ、まりさ?」 男の足音が止まり、再びこちらに近づいてくる。 れいむは、まりさが何を言うのか分からなかった。 まだ三匹で相談はしていない。誰が生贄になるか決まっていない。 何か聞き洩らしたことでもあったのだろうか? すると、まりさはれいむの予想に反して、とんでもないことを言い出してきた。 「おにいさん!! まりさがぎゃくたいされるよ!! だから、れいむとありすにはぜったいになにもしないでね!!」 これにはれいむも唖然とさせられた。 隣にいるであろうありすもそう思ったのだろう。 黙っていられなかったのか、声を出してくる。 「ま、まりさ!! まだそうだんしていないのよ!! それなのに、じぶんからすすんでいじめられるなんて!!」 「わかってるよ、ありす!!」 「ほんとうにわかってるの!! いじめられるのよ!! いたいのよ!! それをじぶんからうけるなんて!!」 ありすは、信じられないといった声色で、まりさに問いかける。 そんなありすの言葉に続いて、男も質問を返してくる。 男にとっても、予想外の展開だったのだろう。 しかし、まりさの返答は変わりはしなかった。 「……本当にいいのか、まりさ?」 「いいんだよ!! まりさがぎゃくたいされるよ!!」 「本当に分かっているのか? ありすのセリフではないが、虐待されるんだぞ。あの痛みを忘れたのか? あの苦しさを再び味わいたいのか? それを自分から進んで買って出るなんて正気か?」 全くもってありすと男の言う通りである。二人はれいむのセリフをすべて代弁してくれた。 賢いまりさのことだ。 れいむと同じ考えに行きついていないはずはないだろう。 それなのに、自分から進んで地獄に飛び込むなんて、まりさはいったい如何してしまったのだ!! 「……ぎゃくたいはまりさもこわいよ」 「だろうな」 「できるなられいむとありすといっしょにいつまでもゆっくりしていたいよ!!」 「ならなぜ自分から進んで虐待されようとする?」 まりさは、男の問いに少し間を置いた後、おもむろに語りだした。 「ぎゃくたいはされたくないよ!! でも、れいむとありすがぎゃくたいされるのは、もっといやだよ!!」 この言葉には、男ばかりかれいむも言葉を失った。 まりさが、自分から進んで志願した理由。 それは、れいむとありすを守るためだというのだ!! れいむは心を叩きつけられるような衝撃を受けた。 れいむにとって、まりさとありすは大切な存在だ。しかし、一方で虐待は受けたくない。 れいむは友情と虐待を天秤にかけて選びきれなかった。 精々譲れない妥協点として、三匹でサイクル回しをすることを考え付いただけ。 自分の被る被害をなんとか最小限にしようということばかり考えていた。 このれいむ考えを非難することなど、誰にも出来はしないだろう。 人間や妖怪ですら、心を強く持つことはとても難しいことなのだ。 増してや、幻想郷におけるヒエラルキーの下層に位置するゆっくりだ。 自分のことを第一に考えても、それは決して責められるべきことではない。 しかし、まりさは違った。 弱いゆっくりという身でありながら、自分よりれいむとありすを優先させた。 自分が被る被害など、初めから頭になかったのだ。 「……それじゃあ何か、お前は二匹の為に進んで虐待を受けるというのか?」 「そうだよ!! ゆっくりまりさだけにぎゃくたいしてね!!」 「二匹の為ってことは、今日だけじゃなく、明日も明後日もお前が虐待を受けるのか?」 「そうだよ!! まりさがゆっくりまいにちぎゃくたいされるよ!!」 「やはり正気の沙汰じゃないな……そんなことをして何になる。自分だけが虐待されるなんて、不公平だとは思わないのか? お前が俺に酷い虐待されている時、他の二匹は悠々とゆっくりを満喫しているんだぞ。妬ましいと思わないのか? 毎日三匹交替で虐待されていけば、全員公平なんだぞ。それが分からないのか?」 「おにいさんおいうことはわかるよ!! でもまりさは、このなかでいちばんおねえさんなんだよ!! だから、がんばらなくちゃいけないんだよ!! それに、まりさのおかあさんがむかしいってたよ!! だいすきなゆっくりは、じぶんをぎせいにしても、まもらなくちゃならないって!! まりさもそうおもうよ!! だから、だいすきなれいむとありすのぶんまで、まりさががんばらなくちゃならないんだよ!!」 「……いいだろう。そこまでいうなら、お前の意地を見せてもらおうか。今日の生贄はお前で決まりだが、明日は明日でもう一度決めるチャンスをやろう。 いつでも今の言葉を撤回して構わない。あまり意固地にはならないことだ」 そう言って、男は隣でゴソゴソ物音を立てる。 まりさを連れていこうとしているのだろう。 「まりさっ!!」 れいむは、そんなまりさに言葉をかけた。 何か言いたいことがあったわけではない。 いや、違う。言いたいことはたくさんあったが、いったい何から伝えればいいのか、考えを纏められないでいたのだ。 まりさの自己犠牲をもいとわない尊い精神と、れいむたちへの深い愛情に対し、いったいどんな言葉で返せばいいのか分からなかった。 自分が何か言ったところで、陳腐な言葉しか掛けられないだろう。 それでも、何か言わなければならない。言わずにいられない。 強迫観念にも似た思いで、まりさの名だけ口にする。 そして壁越しに聞こえてくるまりさの声。 「だいじょうぶだよ、れいむ!! ありす!! まりさはへいきだよ!! どうせいつもとおんなじだよ!! すぐにもどってくるから、ゆっくりまっててね!!」 それだけ言って、男の足音は徐々に遠ざかっていった。 「まりさ……」 再度れいむの口から出てくるまりさの名前。 れいむは、ただただまりさが無事に帰ってきますようにと、必死で願い続けた。 「れいむ……まりさ、つれていかれちゃったね」 ありすが壁越しに言葉をかけてくる。 それに対し、れいむは一言、「そうだね……」と返しただけであった。 何を話せばいいのか分からなかったのだ。 まりさのおかげで、自分たちは今日は虐待されないだろう。 それは、れいむの然程長くない人生の中で、最も嬉しい瞬間であった。 それと同時に、れいむの人生の中で、とても悔しい瞬間でもあった。 まりさの無事を願う反面、虐待されなくて良かったなんて思っている自分がいる。 なんて醜いのだろう。 まりさを助けたい。まりさの役に立ちたい。 もし自分から名乗り出れば、明日はまりさは虐待されないだろう。男も続けてまりさを虐待するくらいなら、きっとれいむを選ぶだろう。 まりさに対して胸を張れるだろう。 しかし、れいむには自分を虐待しろなんて男に言えない。言い出せない。言いだす勇気が持てない。 虐待はされたくない。虐待は怖い。 でも、まりさは助けたい。 れいむの葛藤は計り知れなかった。 おそらくありすもれいむと同じ気持ちなのだろう。 最初の言葉以外、れいむに話しかけてこなかった。 ここに来て以来、初めて味わうゆっくりした一日だというのに、何でこんなに気が晴れないのだろう。 モヤモヤした気持ちは一時間後、虐待を終えた男がまりさを連れてくるまで続いた。 「明日の虐待は今日とは比べ物にならないほどキツイ。安易に自分がなんて、言わない方が身のためだ」 まりさを部屋に戻し、男が挑発してくる。 しかし、まりさの意志は変わらなかった。 「ゆぅゆぅ……ゆぅ………あ、あしたも……まりさがぎゃくた…い……されるよ……れいむとあり……すはいじめ………ない……で…ね……」 苦しそうな声で、しかし、きっぱりと男の言葉を否定するまりさ。 男はそんなまりさを苦々しく思ったのか、「ちっ!」と舌打ちをして、去って行った。 男が行った後も、まりさは荒い息を吐いている。 相当きつい虐待を受けたことが、姿を見ずとも容易に感じられた。 「まりさ……だいじょうぶ?」 なんて声をかければよいのか分からず、れいむは在り来たりな言葉を口にする。 対して、まりさは「ゆっ!! へいき…だよ!! ぜんぜん……へっちゃら…だよ!!」と、不安を見せまいと虚勢を張ってきた。 それが一層れいむの心をかき乱す。 とにかくなんか言葉をかけなければ!! 焦るれいむは、思ったことを適当につなげ、言葉を紡ぐ。 「まりさ、ゆっくりありがとう!! まりさはすごいよ!! やっぱりえらいね!! まりさのおかげで、れいむとありすは、ぎゃくたいされなかったよ!! ゆっくりかっこいいね!! きょうはゆっくりやすんでね!!」 「そうだよ、まりさ!! ゆっくりねむってね!!」 れいむに続いて、ありすも言葉を投げかける。 ありすもどうやら何を言えばよいか分からなかったと見える。 他人を特に気遣うありすだ。 れいむ同様、まりさを頼り切った状況に、悔しく思っているに違いない。 「ありが…とう、れいむ、ありす!! まりさ、ゆっく……りおひるねす……るね……」 まりさはそう返すと、その後、何も言ってこなくなった。 おそらく毛布に包まって、寝入ったのだろう。 今までの日課のパターンと同じである。 れいむとありすは、まりさを起こさないように、「しずかにしようね!」と口裏を合わせ、その後一切の会話をしなかった。 れいむは、まりさの心意気を無駄にしないためにも、精一杯ゆっくりさせてもらうことにした。 この日、れいむの体は久しぶりにゆっくりを味わった。 この日、れいむの心は、一日中ゆっくり出来なかった。 その5?へ